FinTech領域で注目のトレンド、キャッシュレス決済
広範に渡り、数も多いFinTechサービス。分類方法も一通りではないが、ここでは前出の調査結果で用いられている8領域を紹介しよう。
・ソーシャルレンディング(融資)
・クラウドファンディング
・投資・運用サービス(投資・運用、情報提供)
・ペイメント・決済
・ブロックチェーン(プラットフォーム、仮想通貨)
・企業会計(クラウド型会計ソフト、会計・経理クラウドサービス)
・家計簿・経費精算アプリ(家計簿・資産管理、経費精算)
・金融機関向けセキュリティサービス
この中でも、昨年から今年にかけて話題をさらったのが「ブロックチェーン(仮想通貨)」、今話題を呼んでいるのが「ペイメント・決済」領域だろう。前者、特に「仮想通貨」という言葉にあまり良いイメージを抱かない読者も多いかもしれないが、通称「仮想通貨法(改正資金決済法)」の成立や、先掲の「規制のサンドボックス」によって法的な環境整備が進んでいる。
そして「最も身近なFinTech」ともいえる後者は、インバウンド需要の拡大などでさらなる競争の激化が見込まれる領域で、現金を使わずスマートフォンアプリなどを活用し、オンライン上で決済を完了させる仕組み。代表的なサービスは冒頭でも触れた「PayPay」や「Apple Pay」に「Google Pay」、「Amazon Pay」や「PayPal」、「LINE Pay」のほか、中国市場向けの「WeChat Pay」や「Alipay」などが挙げられる。
経済産業省が2017年5月に公表した「FinTech ビジョン」では、「FinTechが付加価値を生み出すために必要な決済記録の電子化の鍵はキャッシュレス化の推進」であると位置づけられている。そして同省が4月11日に発表した「キャッシュレス・ビジョン」では、キャッシュレス化によって実店舗の無人化省力化、不透明な現金資産の見える化、流動性向上、不透明な現金流通の抑止による税収向上につながることや、支払データの利活用による消費の利便性向上や活性化など、様々なメリットが期待できるとされている。
少子高齢化による労働力減少が避けられない日本にとって、「生産性向上」につながるキャッシュレス化は是非とも推進していきたい動きなのだ。
ところが、同資料を見ると日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18.4%。最も低いドイツの14.9%は上回っているものの、韓国の89.1%や中国の60.0%には遠く及ばない。こうした「現金主義」には、日本の治安の良さや現金に対する高い信頼性が反映されているのだが、その分なかなかキャッシュレス化が進まない状況にある。言い換えれば、国内においては市場参入の余地が残されている領域とも言える。
先日「PayPay」が行った支払額の2割をポイントで還元、さらに40回に1回の確率で全額(10万円相当まで)還元という大規模なキャンペーンは話題を呼んだが、システムやセキュリティの問題が指摘されている。認知という意味では成功しただろうが、「PayPayではじめてスマホ決済サービスを利用した」という利用者層にとっては、スマホ決済サービス全体に対しての不信感を持たせてしまった一面もあるだろう。
今後この領域で成功を収め、日本のキャッシュレス化に一役買うには、万全のセキュリティ対策が必須となる。
また、11月13日にマクロミルが発表したキャッシュレス決済に関する調査結果でスマホによる支払い方法別利用率を見ると、「タッチ型決済」が88%、「QRコード決済」が35%。QRコードによるスマホ決済が普及している中国や韓国とは事情が異なる点も、押さえておきたいところだ(PayPayはQRコード、バーコード決済)。