全米の高校が集まる「DECA」
さて、前回は、日本では画期的な「GTEプログラム」について説明した。実はこのプログラムをきっかけとして、シリコンバレーでの高校生起業家教育について授業参観する貴重な機会を得た。件のカリフォルニア州ハーカー高校を訪問することができたのである。
日本ではおよそ考えられない、聞いている人のエモーションに訴えるプレゼンテーションの仕方とか、株やクレジットカードの使い方といった極めて実践的な内容に、教師が熱く語りかけ、生徒も積極的に質問していた。アクティブラーニングの模範のような授業であった。
同校では、さらに、飛び抜けた生徒をどうサポートするか、高校生では遅いと考える起業家教育を、どのように中学レベルに導入すべきかについて議論しているとのことである。もう日本との差は、何もしなければ広がるばかりだと感じた。
さらに、ハーカー高校のような起業家教育に熱心な全米の高校が集まる「DECA(Distributive Education Club of America)」という組織の存在を突き止めることができた。
DECAは、第2次世界大戦後まもなく1946年に創設され、70年以上の歴史がある。“distributive education”とは最近ではあまり使わない言葉ではあるが、「産学共同教育」という意味があるようである。先生に聞いてみると、今や特に意味はなく、DECAの一文字だけで通用しているということであった。
そしてDECAの性格もだんだん変遷し、今や全米でビジネス界における次世代リーダーを育成するためのプログラム、すなわち、起業家教育の中心となっているということであった。
DECAのキャリアクラスターは、大きく、(1)マーケティング、(2)マネジメント、(3)ホスピタリティとツーリズム、および(4)ファイナンスといった4つから構成されており、この点で「SAT」*1や「ACT」*2といった他の能力試験と差別化されている。米国の大学では広く認知され、入試に際してもDECAでの活躍は評価されるという。
*1:Scholastic Assessment Test。米国のカレッジボードが主催する大学進学適性試験。
*2:American College Testing。米国の民間企業が主催する大学進学適性試験。