6月27日、経済産業省は『オープンイノベーション白書 第二版』を発行した。日本のオープンイノベーションの取り組みの現状を可視化し、広く共有することを目的にまとめられた資料で、初版は2016年7月に発行されている。第二版では統計データや事例が最新の物に更新され、より説得力のある分析が行われた。前半のポイントと、後半で言及されているオープンイノベーションの課題点や成功要因について見ていこう。

海外と比べた国内の「オープンイノベーション」事情

 白書の前半部分では、主に海外と比べた際の国内のオープンイノベーション事情について語られている。第1章では「オープンイノベーションの重要性と変遷」と題し、内部資源のみによってイノベーションを目指す「クローズドイノベーション」が限界に達する中、国内でも中・大企業によるオープンイノベーションの取り組みが成熟しつつある事情について述べられている。

 また従来は主に研究開発領域で用いられていたオープンイノベーションの取り組みが、最近では技術の商用化や新たなビジネスモデルを生み出すために用いられるようになってきていること。そして世界的なトレンドとして、大企業とベンチャー企業間の協業・連携事例が急速に増加していること。特に欧州ではイノベーションのプロセスにおいて「ユーザー」は単なる研究対象ではなく、企業と相互フィードバックを行う等の重要な役割を担う立場であると説く「オープンイノベーション2.0」が提唱されていること等が語られている。

 第2章では、欧米企業に比べると日本企業のオープンイノベーション活動の実施率は高くないこと、特に産学の連携不足がイノベーション創出における弱点であることが指摘されている。そのため、文部科学省と経済産業省は「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を策定。欧米企業に比べ、問題・課題解決段階で大学や公的研究機関をパートナーと考えない傾向にある日本企業に対し、大学・国立研究開発法人について、より理解を深めることを求めている。

 第3章ではエコシステムの国際比較や、優れたエコシステムを持つ都市としてシンガポール、ボストン、ロンドン、ベルリン、パリを挙げ、それぞれを構成するアクターの特徴やエコシステム構築の経緯が紹介されている。