大企業がベンチャー企業を公募し、協業を検討するといった取り組みは2011年頃から国内でも盛んに行われるようになった。ベンチャー企業が有する先端技術や既存事業に囚われない事業アイデアと、大企業が保有する膨大なリソースを融合することで、新たな事業を生み出そうとする動きだ。
成功事例として、2015年からアクセラレータープログラムを実施している森永製菓の事例が挙げられている。同社はベンチャー企業への出資実績や社内ベンチャーの創出、そして写真加工アプリ等を手掛けるアンジーと提携して「おかしプリント」という新規事業をリリースするなど、具体的な成果を上げている。
また、アクセラレータープログラムをきっかけに新たな顧客接点の構築に成功した三菱UFJ信託銀行も成功例として紹介されている。同社は家計簿アプリを手がけるスマートアイデアと金融教育分野で連携し、ゲームコンテンツの提供によってこれまで接点の無かった若年層からの注目を集めた。
3つの課題に焦点を定めてオープンイノベーションを成功させる
オープンイノベーションの課題や阻害要因は戦略・ビジョン等の「組織戦略」要素、外部とつながるための「組織のオペレーション」、文化や風土といった「ソフト面の要素」の3類型に区分され、これらを乗り越えることがオープンイノベーションの成功要因となる。
各項目の詳細は白書をご覧いただきたいのだが、例えば「組織のオペレーション」に分類される「内部ネットワーク」がオープンイノベーションの課題・阻害要因となっている場合、「社内の理解や会社内部でのネットワークやコミュニティ作りを欠くと、『成果が出ていない』『何をやっているのかわからない』という理由で取り組みが中断されてしまう」とある。これを成功要因に変えるには、「内部ネットワーク・コミュニティの形成と巻き込み」を行えば良いというわけだ。
白書では第4章で挙げられた各事例がこの3類型に区分されているので、自社の課題がはっきりしている場合は先にこちらを確認した後に該当する事例を読み込むという順番でも良いだろう。
前半で公的データを用いた現状の分析、後半で具体的な取り組みについての分析が行われている『オープンイノベーション白書 第二版』は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のサイトからダウンロードできる。オープンイノベーションについての知識を身に付けることは、視野を広げるきっかけにもなるはずだ。読みやすい資料なので、まずは概要版から目を通してみてはいかがだろうか。