野球で「守りのかなめ」と言えばキャッチャーだが、資産運用では?
突然ですが「ペイオフ」という言葉を覚えていますか?
銀行が破綻した場合、その銀行に預けている預金の払戻保証額を、元本1000万円とその利息までとする措置のことです。この措置が本格的に解禁されたのが2005年4月。そこで「1000万円以上の預金を持つ人は預ける銀行を分散させる」という流れが一気に広がりました。
ペイオフは現在も続いています。1000万円以上の預金なんて他人事のように思う方がいるかもしれませんが、そうでもありません。退職金や相続などで急に預金額が増えることは珍しくないからです。投資信託やETF(上場投資信託)などで運用するための投資資金や日常決済用の生活資金のほかに、資産が目減りすることなく、換金が簡単な「守りの資金」をぜひ用意しておきたいものですね。
元本と利息を国が保証する個人向け国債
2005年のペイオフ解禁以降、銀行の破綻によって1000万円以上の預金(元本と利息)が一部しか戻ってこなかったケースが一度だけあります。2010年の日本振興銀行の破綻時です。
その被害にあった友人が1人いました。個人事業主だった彼はたまたま預り金が膨らんでいた時期に運悪く同銀行が破綻。何とか自分で融通できる被害額だったのが不幸中の幸いでしたが、先例のない煩雑な手続きなどで奮闘している姿を見て、安心して預けることができる金融機関・金融商品の重要性をしみじみ感じました。
そこでクローズアップされるのが「個人向け国債」です。国債は読んで字のごとく、国(日本)が発行する債券。つまり、多くの個人が国にお金を貸した証文が個人向け国債ということになります。国に貸したお金ですから、元本と利子は国が保証して支払います。当然のことながら日本の国債はこれまで、元本割れが起こったり、利子が支払われなかったり遅れたりしたことは、一度もありません。
税引前金利は0.05%より下がらない
個人向け国債には3つの種類があります。10年満期で利率が半年ごとに見直される変動金利の「変動10」、5年満期で固定金利の「固定5」、3年満期で固定金利の「固定3」の3つです。いずれも1万円から購入できて発行から1年経てばいつでも換金可能です。その場合、原則として2回分の利子(税引前)相当額の0.79685倍した金額をペナルティとして支払うだけ。つまり、購入から1年以上経てば、元本割れはしません。
気になる金利はどうなっているでしょうか。個人向け国債の金利設定方法は、「変動10」が基準金利×0.66、「固定5」が基準金利-0.05%、「固定3」が基準金利-0.03%となっています。
基準金利とは機関投資家などの間で売買される国債の市場実勢金利のことで、3種類で違っています。たとえば「変動10」(第100回)では0.04%です。しかし、大事なのは3種類とも金利の下限が0.05%に設定されていること。計算上それより低金利になったとしても0.05%から下がることはありません。
事実、直近に発行される「変動10」(第100回)の利率は計算上0.04%×0.66=0.0264%になりますが、実際の適用利率は0.05%(税引前)になっています。
購入金額に上限なくペイオフ対象外
個人向け国債は最寄りの銀行や証券会社、ゆうちょ銀行で購入でき、しかも金額に上限はありません。もちろんペイオフの対象でもありません。
財務省がまとめた「平成29年度 国債広告の効果測定に関する調査委託業務」によると、個人向け国債を買った人の購入理由として最も多かったのが「国が発行していて安心だから」で約58%でした。以下、「身近な金融機関で購入できるから」(約38%)、「1万円単位で購入できるから」(約32%)、「中途換金しても投資額を下回るリスクがないから」(約21%)と続いています。
安心して投資できるという意味で、国の保証があることが大きな魅力になっているようです。
「1年しばり」と金利水準をどうとらえるか
個人向け国債の特徴をまとめてみます。
(1)元本割れしない
(2)1万円から購入可能(上限なし)
(3)国の発行だから安心
(4)中途換金も1万円からOK(発行後1年以上経過したら)
(5)年率0.05%の最低金利保証
(6)3種類を年12回(毎月)発行
こうして見ると、なかなか魅力的な金融商品ということができます。気になる点は、中途換金できるまでの「1年しばり」と、0.05%という金利水準あたりでしょうか。
「1年しばり」に関しては、個人向け国債を購入する資金をしっかり区別することで対応できそうです。資産運用のための投資資金と日常で使う生活資金と分けて、最初は少なめの金額から購入することを考えてみましょう。なお、名義人が亡くなった場合や大規模災害時などは特例として1年未満でも換金することができます。
「0.05%」という金利水準をどうとらえるかは、相対的な見方になります。郵便局の「定額貯金」が4~5%という金利だった時代を知っている人には確かに物足りなさを感じるでしょう。しかし、昨今の超低金利で、ゆうちょ銀行の定期預金はいまや0.01%(3年、5年)。0.05%なら5倍と考えることができます。
万能の金融商品はありません。この2点に納得できれば、個人向け国債は資産形成における「守りの資産」として大いに有効といえるでしょう。
金利上昇に備えるなら「変動10」で
国債への投資ということで気になるのは、今後迎えるであろう金利上昇局面への対処ではないでしょうか。現在は史上稀に見る低金利時代です。世界中で金融緩和政策とその出口戦略に取り組んでいるなか、日本でもそう遠くない時期に金利上昇局面を迎える可能性は高そうです。
そう考えるなら、変動金利の「変動10」が適していると思われます。10年満期ですが中途解約ができますし、半年ごとの利率設定で金利上昇にも追随していきます。
金利は現状、理論的にこれ以上下げることができないところまで下がっています。金利上昇がいつ、どの程度のスピードで実施されるのか、が問われているいま、個人向け国債なら「変動10」を選んでおくのがベターといえそうです。
国債暴落の心配も無理ないが
一方で、個人向け国債の購入によって国の借金を増やすことに躊躇してしまう方がいるかもしれません。国の借金は2018年3月末現在で1087兆8130億円。そのうち959兆1413億円が国債で、9割弱を占めています。財政赤字が大きいことから、国債が暴落して資産価値がゼロになってしまうのではないか――と心配するのも無理はありません。
確かに、その可能性はゼロではありませんが現実的とは言い難いと思われます。国債が暴落したら国の財政が破綻する前に多く銀行で経営が傾き、私たちの預金や経済活動そのものが危なくなるでしょう。GDP世界第3位の日本を破綻させると世界経済への影響が甚大になることから、事前に世界各国が協調して何らかの回避策を実施すると考えるのが合理的ではないでしょうか。
絶対減らしたくない資金を少額から
サッカーのゴールキーパー、ラグビーのフルバック、野球の4番バッターなど、スポーツにはポジションごとにおおよそ求められる仕事があり、そこに見合った資質のある選手が選ばれます。資産運用も同じです。たとえば、ハイリスクで大きな収益をねらう新興国の株式投信は「三振かホームランか」の4番バッターなのかもしれません。
個人向け国債はさしずめ、小技が得意でチームプレーに徹する2番バッターというところでしょうか。彼にホームランを期待してはいけません。大事なのは2番バッターに合った仕事をさせるとことです。
資産運用でいえば、個人向け国債には、ハイリスクで投資するお金でも日常使う生活資金でもない、普段は使わないが絶対に減らしたくない資金を少額から投資することが、上手に活用するポイントです。さまざまな金融商品を役割に応じて適切に活用すること。個人向け国債には、銀行預金と並ぶ資産運用の“土台”として大いに働いてもらいましょう。





