「卵はひとつのカゴに盛るな」という投資の格言を、副業にも当てはめてみては?
日本でも「副業解禁」の流れが鮮明になってきました。厚生労働省は2018年1月に、副業・兼業について企業と従業員が注意すべきポイントをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表しました。これまで勤務先で禁止されていたり、黙認のうえでコソコソやっていたりした副業が、今後は注目を集めていきそうです。
歓迎したい副業・兼業解禁の流れ
人生100年時代の資産形成を考えると、副業・兼業解禁の流れは大歓迎です。ダブルインカム、トリプルインカムと単純に収入源が増えますし、できるだけ長く働くための仕事を探るチャンスが増えたと言うこともできます。
これまで、副業・兼業が日本で広がらなかった理由のひとつに、主たる勤務先である企業が就業規則で認めていなかった、という点が挙げられます。同ガイドラインによると、副業・兼業を認めていない企業は85.3%、副業・兼業を推進していないが容認している企業が14.7%という調査結果が出ています。
(出典:中小企業庁委託事業「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」、回答数1173社)
これでは、いくら従業員が副業・兼業を希望しても実現は難しい。一方の企業側としては、必要な就業時間の把握や健康管理、職務専念義務、秘密保持などへの懸念があったといいます。これらへ対応するために、現在の法律に基づきながら副業・兼業を実現できるモデル就業規則をガイドラインとしてまとめたわけです。
すでに先進的な企業では、副業解禁の動きが始まっています。ユニ・チャームと新生銀行は2018年4月から副業を解禁しました。ユニ・チャームでは入社4年以上の正社員が対象。新生銀行では、他社に従業員として雇用される形態も解禁と、より進んだ形になっています。ソフトバンクは2017年11月に、コニカミノルタも同年12月に解禁済みです。
いわば国策として副業・兼業の解禁がスタートしたわけですが、今後もこの流れは広がっていくと見られています。国と企業、従業員のそれぞれにメリットがあるからです。
国としては、日本の労働人口がどんどん減っていくなかで、労働力不足を副業・兼業によるワークシェアリングで補おうと考えています。企業は、従業員が外で働いて得た経験やノウハウを本業の付加価値として活かしてほしいというねらいがあります。また、ダイバーシティ(多様性)への対応や魅力的な人材の確保にもつながると見ています。
「卵はひとつのカゴに盛るな」の真意
企業の従業員が自分の資産形成のために副業を考えた場合、重要になるのは業種選びと働き方だと思われます。どんな仕事を、どのくらいの割合(時間)で働くのか。その決断には、少なくとも(1)現在の勤務先の副業受け入れ体制、(2)自分の能力(市場価値)、(3)家族の理解、(4)仕事を得る営業力――という4つの要素が欠かせないでしょう。
ここで筆者が気になっているのは、主に企業側が副業・兼業を「従業員が持っている能力をより伸ばす場やスキルアップとして」考えていること。そうすると、従業員は勤務先と競合しない企業で、現在の業務に関連性の高い、“近い仕事”を選ぶのが現実的になりそうです。
ところで、株式投資や資産運用の世界には「卵はひとつのカゴに盛るな」(Don't put all your eggs in one basket.)という格言があります。卵をひとつのカゴだけに盛ると、そのカゴを落としたら全部の卵が割れてしまう。でも複数のカゴに分けておけば、そのうちのひとつを落としても、他のカゴの卵は影響を受けずに済む――。
つまり、(儲かりそうな)特定の金融商品に集中して投資をするのではなく、複数の商品に投資してリスクを分散させた方がよいという教えです。
安定的に資産価値を高めるリスクマネジメント
ここで大事になるのは分散の仕方。できるだけ値動きの特徴が違う商品に資産に分けることで、落としたときに全部割れるのを避けると同時に、ある金融商品が値下がりしたときに別の資産が値上がりし(もしくは値下がりがより小さくなり)、資産全体としての価値が大きく下がらない効果が期待できるのです。
分散させると資産価値が急に高くなることは期待できません。しかし、資産運用で最も重要なのは中長期で資産が安定的に増えていくことです。そのためにも、資産運用の世界では株式と債券、不動産(「不動産投資信託」含む)など値動きの特徴が違う資産に分散して投資するリスクマネジメントが基本となっています。
自分の強みが活きる“遠い業種”からトライ
副業の業種選びも同じような考え方をしてはどうでしょうか。国や企業は、従業員が持つ経験・ノウハウを活かすことを前提に、現在の勤務先に近い業界や職種の副業を勧めているように見えます。これでは、主たる勤務先が含まれる業界全体の景気が悪くなったり業績が悪化したりすると、副業にも悪影響を及ぼす可能性が高まってしまいます。せっかく収入源を増やしても、その収入源すべてで賃金が下がってしまったら意味がありません。
筆者が検討を勧めたい副業は、勤務先の業種・業界とできるだけ離れている仕事です。たとえば、卓越した英語力を持つ金融機関のIR(株主向け広報)担当者なら、金融・経済の翻訳・通訳ではなく、観光業や自治体のインバウンド向け英文資料の制作などです。
主たる勤務先に近い業界ほど、副業を得るチャンスは増えるかもしれませんが「共倒れ」の危険性もあります。リスクマネジメントの観点からも、最初は遠い業種からトライしてはどうでしょうか。
地元密着型で新たな価値が見つかることも
もうひとつ加えるなら、いま暮らしている町や郷里など、地元密着型の副業もお薦めです。他人やコミュニティの役に立つという喜び(やりがい)が分かりやすいし、自分で気づかない自分の強みや特技が見つかって、それが収益に結びつくこともあります。
とくに地方で目立つケースですが、実家が持つ休耕畑を市民農園に再生して家族みんなで農作業を指導したり、パソコンやインターネット、スマートフォンの「よろず相談屋さん」をやったり・・・。若いときからの趣味である車・オートバイ修理やオーディオいじりでたまった部品をネットオークションで売買したら、思ったより大きな収入を得たという人も筆者も周りにいます。
副業選びというと難しく感じますが、就業後や休日に地元の友人やコミュニティでいつもやっていることが、実は収入源になることも十分にあり得ます。人生100年時代の資産形成として最も大事な「長く働く」という意味では、小さく生んで大きく育つ可能性がある地元密着型の仕事は、すぐにでも始めてみる価値があると思います。
ビジネスではなく「商売」で見つける副業
国や企業(勤務先)が副業・兼業を促進することは大いに歓迎すべきことですが、モデルケース通りに働く必要はありません。地域密着の小さなコミュニティで長く働き、身近な人たちに喜ばれながら収入を得ることは今後の大きな楽しみでもあります。まずは、自分の仕事や働き方、能力を「棚卸し」することから始めてみてはどうでしょうか。
副業は「ビジネス」ではなく「商売」で考えると分かりやすいようです。私たちビジネスピープルに染み付いた「グローバル化」「市場の成長性」「マネタイズ」などの言葉は少し横に置いてみる。少額な報酬に対して、それをちょっと超えた質の仕事を繰り返すことで喜ばれる自分の特技や強みは何でしょうか。これが、中長期で安定的な収益が期待できる充実した副業を見つけるコツかもしれません。





