もともと、Artificial Intelligenceという言葉が使われるようになったのは、1956年に開催されたダートマス会議でのこと。機械(コンピュータ)の演算能力がこれほど優れているのだから、やがて言葉を使えるようになるだろう。そして人間のように知的なこともすぐにできるようになるに違いない。そうした考えのもと、AIの研究がスタートした。
第1次AIブームはその翌年の1957年、心理学者・計算機科学者のフランク・ローゼンブラット氏が視覚と脳の機能をモデル化した「パーセプトロン」までさかのぼる。パーセプトロンは脳神経細胞を擬似的に再現する人工ニューロン/形式ニューロンの考え方を確立し、現在の機械学習の基礎をつくった。これがニューラルネットワークの発祥と言えるだろう。
だが、効果のある用途が限定的だったことや、いくつかの問題点が指摘されたことなどにより、第一次AIブームは具体的な成果を見ぬまま終息した。
第2次AIブームは1980年代に起きた。「エキスパートシステム」と呼ぶ新しいAIシステムの台頭によって、AI熱が再び沸騰した。エキスパートシステムの「エキスパート」は「専門家」を指す。エキスパートシステムとは、ある特定の分野に特化して、複雑な設問に対して分析や推論を交えて適切に答えてくれる、言わば専門家代わりの役割を果たすコンピュータシステムだ。
日本では1982年、通商産業省(現在の経済産業省)が国家プロジェクトとして「第5世代コンピュータ」の開発を推進し、人間を超えるAIを目指して520億円もの助成金を拠出した。しかし、そのプロジェクトでも目標の達成や実用化には至らず1992年にプロジェクトが終了、ブームの火は消えた。
誰もがAIを利活用できる時代に
ダートマス会議でAIという言葉が誕生したとき、研究者たちが頭に描いていたゴールはきっと、人間と同等の知識、もしくは人間を超える知能を持った全知全能の人工知能を発明することだっただろう。映画やコミックスに登場するAIはそのような存在として描かれている。
人間の脳は「万能性」や「汎用性」に優れている。人間と同様の知能ということは、人工知能にも「万能性」や「汎用性」を求めることになる。これを専門用語で「汎用人工知能」という意味の「AGI」(Artificial General Intelligence)と呼ぶ。また、AGIを「強いAI」と表現することもある。