「AIを導入」や「AIを活用」といった言葉を毎日のようにニュースで耳にする。今、話題に事欠かない人工知能(AI、Artificial Intelligence)の“正体”は、人間の脳の仕組みをまねたコンピュータアルゴリズム(計算手法)「ニューラルネットワーク」である。前回、画像認識の精度を大幅に向上させた技術がニューラルネットワークであることに触れた。

 今回は、このニューラルネットワークについて詳しくみていく。ニューラルネットワークの基本的な仕組みを把握すると、ディープラーニング(深層学習)をはじめとする最近のAI関連キーワードの理解が深まるはずだ。

(前回の記事)
「AIの民主化」がもたらした第3次AIブーム到来
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53081

ニューロン同士が電気信号をやりとりする

 人間の脳の仕組みは完全には解明されていない。しかし、脳は100億個とも300億個超とも言われる膨大な数の脳神経細胞「ニューロン」で構成されていることは分かっている。

 ニューロンとニューロンの間にはすき間があり、普段はつながっていない。しかし、ニューロンは必要に応じてシナプスと呼ばれる伝達器官で他のニューロンに接続し、互いに電気信号をやりとりする。このようにニューロンがシナプスでつながるさまを「ネットワーク」と表現している。

 人間の脳は、見たり聞いたりしたものを判断したり考えたり記憶したりする。こうした行為は、脳の中で膨大な数のニューロンがシナプスでつながり、電気信号をオン/オフしながら相互に通信することで実現している、と考えられている。

 コンピュータはどうだろう。コンピュータは内部で電気信号をオン/オフしながら、演算などの様々な処理を行う。電気信号によって処理を実行する点で、コンピュータの仕組みは人間の脳と、とても似ている。

 そこで、人間の脳のニューロンのように、コンピュータのソフトウェア上で形式的なニューロン(以下ではこれも単に「ニューロン」と呼ぶ)を設定し、ニューロン同士が通信して何かの値(答え)を返す仕組みが考え出された。それがニューラルネットワークだ。

人間のように学習して知見を深める

図1 ニューラルネットワークの基本的な仕組み

 図1はニューラルネットワークを模式的に表したものだ。入力層、中間層、出力層からなり、それぞれの層にニューロンが存在する。