米国のクイズ番組「ジョパディ!」でクイズ王と対戦したIBM Watson(YouTubeより)

 人間が話しかけた内容や人間同士の会話をAI(人工知能)が正しく理解し、必要としている情報を教えてくれたり、アドバイスしてくれたりする。SF映画やコミックに描かれてきたような近未来が、あらゆるビジネスにおいて現実になろうとしている。

 コンピュータは人間の言葉やその意図を理解できるのだろうか? こんな命題に米IBMが開発した人工知能(AI)「IBM Watson」は一定の解を示した。

 既報の通り、IBMはスーパーコンピュータ「ディープブルー」でチェスの世界チャンピオンに挑んで1997年に勝利した。次の手以降の展開を読む「先読み」が重要とされるチェスで、ディープブルーは1秒間に2億手先までを読む力を備え、計算と記憶能力で人間を凌駕した。

クイズ番組でクイズ王と勝負!

 IBMは次なる目標として「クイズで人間を超える」ことを目指した。そしてWatsonを開発し、米国のクイズ番組「ジョパディ!」でクイズ王たちに挑戦した。

 この挑戦に対しては、大きく2つの見方があった。ひとつは、「コンピュータなんだから知識は豊富だろう。クイズなら勝って当然だ」というもの。もうひとつは、「そんなこと無理に決まっている」という真逆の予測である。ソフトウェア技術者の多くは後者の見解だった。クイズに正解するには、何よりもまずWatsonが人間の言語を正しく理解しなければならないからだ。Watsonはジョパディ!で他の参加者と同じ席につき、人間に向けて「自然言語」で出題されるクイズに答える必要があった。