トランプ政権で国家安全保障担当の補佐官だったジョン・ボルトン氏はトランプ大統領就任に今から備えよと言う(写真は2023年4月29日台北での安全保障に関するシンポジウムでの講演、写真:AP/アフロ)

 2024年3月6日、秋の米大統領選挙に向けた野党・共和党の候補者選びでドナルド・トランプ前大統領と争っていたニッキー・ヘイリー元国連大使が選挙戦からの撤退を表明し、トランプ氏の党指名獲得が確実な情勢となった。

 もしトランプ氏がホワイトハウスに復帰したら一体どうなるかという「もしトラ」から、政権交代を織り込む「ほぼトラ」へと、国際社会の関心が移りつつある。

 日本などの同盟国が、第2次トランプ政権に不安を抱いているこの時期に、ちょうど良いタイミングでトランプ氏の外交政策に精通した3人の人物が、日本メディアとのインタビューに応じた。

 一人は、トランプ前米政権で駐日大使を務めたウィリアム・ハガティ上院議員であり、もう一人は、トランプ前政権で国家安全保障会議の主任スタッフを務めた現米国第1政策研究所(AFPI)外交政策担当代表フレッド・フライツ氏である。

 3人目は、トランプ前米大統領のもとで大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトン氏である。

 3人のインタビューの詳細は後述するが、要点は次の通りである。

 ハガティ上院議員は「トランプ氏は同盟・友好国が可能な限り強くなり、(米国に)協力的になるよう求めている」と説明した。

 フレッド・フライツ氏は、トランプ氏の対日認識について「米国の国益優先という米国第一外交にとっても、アジア全域での経済や安保面の利益保持には日本との絆が決定的に重要だと考えている」と述べた。

 ジョン・ボルトン氏は、トランプ氏について「最も懸念されるのは同盟関係のあり方への認識の欠如だ」と指摘した。

 日米同盟が日本だけでなく「米国の安全保障も強化していることに気づいていなかった」と断じた。

 ジョン・ボルトン氏は、トランプ氏との外交政策上の意見の対立から、任期の途中(2019年9月10日)で大統領補佐官を解任されている。

 トランプ政権からの離脱後、政権の内情を暴露する回顧録を執筆・出版した。

 ボルトン氏に対しては、観念的かつ挑発的で反対意見に対して報復を仕掛けるという批判がある一方で、米国優位を維持するために努力する抜け目のないインテリ策士だとの評価もある。

 さて、2024年2月10日、トランプ前大統領はサウスカロライナ州の選挙集会で、あるNATO(北大西洋条約機構)加盟国首脳から大統領在任中に「我々が(国防費を)支払わず、ロシアから攻撃されたら、守ってくれるのか」と問われ、「守らないし、(ロシアに)好き勝手にやっていいと伝える」と答えたことを明かした。

 さらに、同年3月、トランプ氏は「来年の大統領選に勝利すればウクライナでの戦争を終わらせ、ロシアとの対立に終止符を打つ」と自身のウエブサイトへ投稿した。

 これらの考えは、米国の同盟諸国を不安に陥れ、西側の外交・防衛関係者に警戒感を抱かせている。

 トランプ前政権下では、同氏が非常に特異で頻繁に変わる世界観を持っていても、実際の政策は相当な経験を持つ、例えばボルトン氏のような高官スタッフによって米国のパートナーのためになるように修正されたり、解釈されたりして事なきを得てきた。

 だが、今回トランプ氏が大統領に返り咲いた場合、ボルトン氏のように直接トランプ氏に諫言することができる高官スタッフを見出すことは難しいであろうというのが筆者の見立てである。

 さて、本稿では第2次トランプ政権を見越して、日本が準備することについて私見を述べてみたい。

 ボルトン氏は、日米安保条約の改正に備えるべきだと助言している。筆者もボルトン氏に同感である。

 以下、初めにハガティ氏、フライツ氏およびボルトン氏の日本メディアとのインタビューの内容について述べる。

 次にトランプ氏の日米安保条約改正に関する過去の発言について述べ、最後に第2次トランプ政権を見越して、日本が準備すべきことについて述べる。