28年連続プラス成長の移民国家

 オーストラリアは移民国家で、コロナ禍前まで年間約20万人が永住権を獲得してきた。移民を増やすことによって人口を拡大させ、経済も活性化させてきた側面がある。オーストラリア経済は1992年から、コロナ禍前の2019年まで28年連続でプラス成長を続けたが、その要因の一つに移民受け入れがあるのは間違いないだろう。

 ただ、魅力のない国に移民しようという人はいない。魅力があるからこそ、移民をしようと海外から今もたくさん、オーストラリアにやって来ているのだ。その理由に、間違いなく世界最高水準の賃金は挙げられる。

 アメリカが優れた人材を世界中から集め、豊かな国をつくり上げたことはよく知られているが、今起きているのは、まさに世界レベルの人材獲得競争なのだ。

 日本の若者の「出稼ぎ」を紹介したのがNHKの番組『クローズアップ現代』だったが、実は同じ番組の後半で、日本で働くベトナム人の労働者の声が紹介されていた。日本の賃金は安い。しかも、円安でその価値はさらに下がってしまっている。ベトナム人にとって、日本で働く魅力がどんどん薄れてきているというのだ。

 そのために、技能実習生の名のもとでベトナム人労働者を雇用してきた日本の農家の中には、ベトナム人が集められなくなって困っているところもあるという。日本で働くよりも、韓国など他の国で働いたほうが稼げるという実態があるからだ。

 この先、例えば介護を担う人材が圧倒的に足りなくなることは予想されている。海外から人材を集めてこなければ、立ちゆかなくなる可能性が高い。しかし、実はそれは、高齢化が進む、どの国でも同じことだ。

 オーストラリアの介護現場で、日本の看護師が働いたという実例を紹介したが、同僚はフィリピンやネパールの人材だったという。もし、海外の人材に介護を担ってほしいのなら、日本はオーストラリアともグローバルレベルで賃金レベルも含めた人材獲得競争をしなければならないのだ。

 建設や工事などを担う人材も同様だ。人材が高齢化し、担い手がどんどん減っている。日本の建設現場などでも外国人を見かけることも増えてきたが、この先、この領域でも人材獲得競争が起こる。賃金が高い国と安い国、どちらが選ばれるか。

 シドニーの工事現場では、中南米の若者たちをたくさん見かけた。実は現地で聞けば彼らの多くは、学生ビザで入国しているのだという。学生ビザでは、一部に制限はあるが、基本的に自由に働ける。そこで、語学学校や専門学校に通い、空いた時間で肉体労働をしているのである。