「私たちはAIを身近で包括的なものにし、誰一人取り残さない」

 この言葉は、世界的なITソリューションプロバイダーであるレノボ・グループのヤンチン・ヤン会長兼CEOが発したもの。2023年10月、レノボは今年で9回目となるイベント「Lenovo Tech World 2023」をアメリカ・テキサス州オースティンで開催した。大きなテーマに掲げられたのは「AI for ALL」。さまざまな発表と展示を行われたが、その中で冒頭の言葉を述べたのだった。

 AI for ALLが意味するのは、世界中のすべての人と企業にAIを提供するというレノボのビジョンだ。ただし、AIが普及する上ではプライバシーの懸念もある。データ学習が精度を向上させる鍵になるため、個人のパーソナルデータや企業の機密データがAIに流出するのでは、というリスクだ。そのジレンマを解決するアプローチとして、この日ヤン氏が紹介したのは「ハイブリッドAI」の構想だった。一体どんなものなのか。

 さらに12月5日には、日本で「Lenovo Tech World Japan 2023」が開催される。同じくAI for ALLが大きなテーマとなるが、日本開催はさらに領域を広げて、ESGやワークプレイスに関連するソリューションも扱う。“今すぐ活用できる”実用的な展示や提案が充実するという。

 アメリカにおけるTech Worldの模様、そして日本開催の見どころについて紹介していく。

※AIへの先進的な取り組みを進める企業他、豪華ゲストスピーカー登壇!
2023年12月5日(火)にANAインターコンチネンタルホテルにて開催!
「Lenovo Tech World Japan 2023」のプログラムはこちら

レノボCEOが語った「ハイブリッドAI」構想

 今こそ私たちは、AIに対する備えがあるだけでなく、AIを推進していることを示すときです──。力強い宣言とともにオースティンで開幕したTech Worldでは、冒頭からレノボがAIにいち早く向き合ってきたことが示された。

 実際に会場で紹介されたのは、ブラジルの手話「Libras」をAIによってリアルタイムで翻訳するツール。ブラジルでは230万人以上がこの手話によるコミュニケーションを活用しており、カメラに向かって手話を行うと同時翻訳する。誰一人、AIの技術から取り残さないというレノボの姿勢が現れた事例だ。

ブラジルの手話「Libras」をAIによってリアルタイムで翻訳

 スマホやThinkPadなどのノートブックはもちろん、サーバーや企業の働く環境支援など、ソフト面の支援も整うレノボ。「ポケットからクラウドまで」という幅広いソリューションを持つからこそ、AIをすべての人に届けることを視野に入れている。

 一方、すべての人にAIを届ける上でジレンマとなるのがプライバシーの問題だ。昨今話題の生成AIは、多くのデータを学習することで回答やアウトプットの精度を高める。しかし、たくさんの人が使い、そのデータをAIが学習してしまえば、個人のプライバシーや企業の機密データが公開情報の一部になるリスクを孕むだろう。

 たくさんのデータを共有したパブリック基盤モデルのAIは精度が上がるが、個人や企業にとっては、AIを使いつつも、時にはそこで使ったデータを自分だけのデバイス、あるいは企業内に留めておきたいと思うだろう。それはパーソナル基盤モデルのAIと言える。この課題に対し、ヤン氏はレノボが見据える明確なビジョンをイベント内で示した。

「パブリックとパーソナル、2つのモデルを最大限活用するには、両方を組み合わせたハイブリッドAIを作ることでしょう。私たちの考えるエンタープライズ基盤モデルこそ、その答えです」

 この言葉に続き、エンタープライズ基盤モデルの具体的なビジョンも説明された。まずレノボのモデル圧縮技術により、さまざまなスマートデバイスでパーソナル基盤モデルのAIを実行できるようになる。

「スマホはAIスマホに、パソコンはAIパソコンになります。さらにそのデバイスに蓄積された個人や企業のデータを学習することで、AIはあなたをよく知り、最適な動きができるようになるでしょう」

 大切なのはここからであり、「デバイス内のデータはユーザーの承諾がない限り、パブリッククラウドに送信されることはありません」と話す。あくまでデバイス内、企業のネットワーク内で学習していく。これはレノボの描くAIのエンタープライズ基盤モデルの一端であり、イベントでは、この開発を進める意思を明らかにしたのだった。

 そのほか、同社は長年ESGにも力を入れており、この分野もAIによって前進させようと動いている。壇上で紹介されたのは、特定の施設において、敷地内外の情報源からエネルギー関連データを収集するESGプラットフォームを自社開発したこと。最大30日かかっていたデータ収集が1時間以内に短縮されたという。その情報をもとに、企業はESG目標を短期で効率的に達成する選択肢を取ることができる。

 さらにこのプラットフォームの技術にもとづいて、AIを搭載したサステナビリティ・エンジンを開発し、企業の省エネルギーや効率化をAIが支援していくという。今やESGは経営者が注力する最重要項目。当日はその開発の最前線も紹介され、多数の参加者が耳を傾けていた。

まもなく日本開催、エグゼクティブ向けセッションも多数

 アメリカの盛り上がりに続き、日本でも12月5日に「Lenovo Tech World Japan」が開催される。昨年は800人超が来場した大規模なイベント。こちらもAI for ALLをメインテーマに、2時間の基調講演(keynote)ではレノボ・ジャパンの経営陣やAI関連のグローバル責任者とともに、世界におけるAIの最新事例や日本での展開戦略などを伝える。

※2023年12月5日(火)にANAインターコンチネンタルホテルにて開催!
「Lenovo Tech World Japan 2023」のプログラムはこちら

 一方、アメリカのTech WorldはAIのビジョンや未来を示すことにフォーカスしていたが、日本開催はAI以外にサステナビリティやハイブリッドワーク、エッジコンピューティングといったサブテーマも設け、企業が今すぐ取り入れられる情報が充実しているという。「ぜひこの場で得た情報をお持ち帰りいただき、そのままお客さまのビジネスにつなげていただきたい」と伝えるのは、当日のセッションにも登壇するレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 ソリューション推進本部の早川哲郎氏だ。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
ソリューション推進本部 本部長 早川哲郎氏

「たとえば電気代の高騰で企業のエネルギー対策は急務となっています。また企業の設備導入も、かつての固定資産を買う形式からサブスクリプション型などに変化してきました。お客さまがまさに直面している課題に対して、我々の回答、それもすぐに導入できるものを中心に示していきます」

 当日は多数の登壇セッションとブース展示が用意されており、セッションでは上述の基調講演のあと、TrackA〜Cという3つの分科会が企画されている。

 TrackAはAI技術を含め、レノボ製品やテクノロジーのアップデートを焦点にしたセッションを複数用意。レノボのパートナー企業や、企業のIT担当者にとって身近な話となるだろう。

 TrackBは、ワークプレイス領域の支援を行うレノボのデジタル・ワークプレイス・ソリューションをはじめ、ソリューション事例が中心となる。特にITのデシジョンメーカー(購買の決裁者)や事業部門の方に有益な情報になるかもしれない。
そしてTrackCは、CIOをはじめ、エグゼクティブ層の関心が高いセッションが並ぶ。たとえばESGやカーボンニュートラルはその象徴だ。

「レノボは早くからESGに力を入れており、たとえばPC購入時に、簡単な手続きでPCに関わるCO2排出量をあらかじめオフセットできるサービスを提供してきました。すでにグローバルで370万トン以上オフセットした実績もあり、当日はこれらをはじめ、環境に対して我々が支援するサービスをご紹介します」(早川氏)

 そのほか、AIの発達により、近年はデータセンターのエネルギー効率がより重視されている。これに対する改善策として注目されるレノボの「直接水冷(※システムから熱を除去し、完全なファンレス動作を実現する)」など、最新テクノロジーについても解説していくという。

新サービスの“初出し”導入事例や、ブース展示も見どころ

 参加者が“持ち帰れる”実用的な情報はこれ以外にもある。たとえば、ここ数年で普及したハイブリッドワークに対するレノボからの提案も充実しているようだ。レノボ・ジャパン合同会社 PC・スマートデバイス事業本部 企画本部 製品企画部 部長の大谷光義氏が仔細を伝える。

レノボ・ジャパン PC・スマートデバイス事業本部
企画本部 製品企画部 部長 大谷光義氏

「ハイブリッドワークが一般的になる中で、PCに求められる機能も変化が生じています。当日は、最新のThinkPadやその周辺機器もとに、PCの常時接続や最新技術とのコラボレーション、セキュリティの進化をお伝えするセッション(TrackA)を設けています」

 加えて、ハイブリッドワークは会議室のあり方も変化させている。テレワーク先とオフィスをつなぎ、生産性の高い議論をどのように実現するのか、そもそもオンラインが増える中で会議室の設備をどこまで充実させるべきなのか、経営層には重要な問題だろう。

「そこで、オフィス家具大手のイトーキさまに参加していただくセッション(TrackC)を企画し、今後、会議室への導入が期待されるテクノロジーやコンセプトを紹介。イトーキさまがこの時代を見据えて新開発した会議室用の机と、レノボ製品を融合した活用方法などもお伝えします」

 そのほか、レノボのデジタル・ワークプレイス・ソリューションに関するセッション(TrackB)では、企業の導入事例など、初出しの情報が紹介されるという。レノボ・ジャパン合同会社 サービスセールス事業部 サービスプロダクトマーケティング本部 サービスプロダクトマーケティング部の八木下敦氏が語る。

レノボ・ジャパン サービスセールス事業部
サービスプロダクトマーケティング本部
サービスプロダクトマーケティング部 部長 八木下敦氏

「9月からMicrosoft 365の導入・運用・サポートまでワンストップで対応するM365クラウド・ソリューションの提供を開始しました。サービスをパッケージ化したことで、サポート内容や費用感も明確になり、お客さまから好評をいただいています。今回はそれらの事例や成果について、今まで外に出ていない情報をお伝えします」

 これらのほか、多数のブース展示も魅力のひとつ。当日は新モデルのThinkPadや直接水冷を搭載したサーバーも展示される予定。「セッションはオンラインでも視聴可能ですが、モノを間近で見て、雰囲気をつかむためにもぜひ会場にお越しいただければ嬉しいですね」と、八木下氏が付け加える。

 今すぐビジネスに適用できる提案が並ぶTech World Japan。12月5日に行われる一日限りのイベントは、参加者がビジネスに使える何かを見つけ、持ち帰れる場所になるだろう。

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