学校復帰より「社会的な自立」を

──教育機会確保法があるなら、文科省も学校も法律の精神をもっと尊重して、不登校の子どもへの個別の対応を考えなければなりませんね。

石井:教育機会確保法の施行に伴い2019年、文科省も重要なのは「学校に登校する」ことを目標にすることではなく、児童が将来「社会的に自立する」ことを目指す必要があるという通知を全国の教育委員会や学校に向けて出しています。

※文科省『不登校児童生徒への支援の在り方について』(令和元年度)

 それまでは、文科省の不登校に関する通知は「学校に復帰させること」を前提とした記述が散見されていました。2019年からは方針を180度転換させたといってよいでしょう。学校に対して、「学校復帰よりも子どもの社会的自立」を支援するため、地域のフリースクールや地方行政が運営する教育支援センター(旧適応指導教室)との連携を求めています。

──そうは言っても、都会ならともかく、地方などでは学校以外の学びの場が少ないケースもあるのでは。また、学校以外のどこかに通おうとすると費用がかさむなど、親にとっては負担が大きいのではないでしょうか。

石井:おっしゃる通りです。フリースクールは全国に約500カ所あると言われていますが、不登校の子どもの受け皿になるには数が少なすぎます。費用も月額平均3万3000円と決して安い金額ではありません。また、住む地域によっては教育支援センターがないところも珍しくありません。

 そもそも、日本のフリースクールはNPOが中心となって運営してきたという歴史があり、費用面ではかなりカツカツ、ほとんどボランティアのような形で運営しているところも多いのです。

 ただ、昨今はうれしいニュースも私の元に届いてきています。大手民間企業がフリースクールを始める、というのです。フリースクールに限らず、通信教育や塾など、学校以外の子どもの居場所が増えています。学校側も、どんどん外部との連携を深めていってほしいですね。