大学院で学ぶ意味、とりわけ国士舘大学大学院で学ぶ意味はどこにあるのか。いま働いている社会人やこれから社会に出る人にとって、大学院での学びは、今後のキャリアや人生へのチカラとなっていくのだろうか。

 その答えを探るべく、同大学院の教授と修了生のクロスインタビューを実施。国際経営論を専門とする国士舘大学大学院 経営学研究科 国際経営論の堀口朋亨教授と、修了生で現在は大手IT企業に勤務する万暁琴(マンギョウキン)氏が対談。上記テーマについて意見を交わした。

企業の海外進出に必要な「内部化理論」
その研究が仕事に生きている

国士舘大学大学院 修了生
万暁琴(マンギョウキン)氏

万暁琴氏(以下敬称略) 2020年4月から2年間、堀口先生のゼミで学びました。入学した理由は、それまでに国際会計を専攻しており、その先にある国際経営を学びたかったからです。特に堀口先生の専門である「内部化理論」は、企業が海外進出する上で必要な考え方であり、グローバル化の時代に必ず仕事に役立つと思いました。

国士舘大学大学院 経営学研究科 国際経営論
堀口朋亨 教授

堀口朋亨氏(以下敬称略) 内部化理論とは、企業が成長するために自社でゼロから能力を生み出すのではなく、外にある能力を内部に取り入れて成功するための理論です。企業買収などが代表例ですね。万さんがおっしゃった通り、企業が海外進出する場合、ルールも文化も違う異国でゼロから始めるより、現地の企業を買収した方が賢明なこともある。そこで、どのように取り込んでいくかという方法論などを学んでいきます。

 特にいま働く中で役立っているのは、内部化がもたらすデメリットやリスク、限界を大学院で学べたことです。なぜなら、実際に買収先や提携先の企業と仕事で関わるとき、相手ができないことやシステム的な限界がわかるからです。

 子会社や関連会社を持つ企業の方は、こういった理論を学ぶことで、より良い会社同士の関係を築けるのではないでしょうか。逆にその点で悩んでいる方がこの理論を学べば、いまの仕事や会社のレベルアップにつながるでしょう。

 ———グローバル化が進む昨今だが、企業が海外進出する際には異国の環境・文化でビジネスを有利に進めることが求められる。そのために内部化理論はきわめて実用的な学問であり、本格的に学べる機関は決して多くない。綺麗ごとではない企業の「海外進出ノウハウ」を身につけられるだろう。

大学院のメリットは、学びを通じた将来への
「人脈づくり」

堀口 万さんは修了生として、国士舘大学大学院の学びはどんな人にとって有意義だと思いましたか。つまり、どういう風にこの大学院を活用してほしいと感じましたか。

 いくつかありますが、まずは転職やキャリアアップを考えている人の“人脈作り”に良いと思います。先生や大学院がいろいろな企業の方とネットワークを持っていて、在学中にもたくさん紹介していただきましたよね。たとえば私の研究論文は中国のハイアールグループを題材にしましたが、先生の協力で元顧問の方にインタビューさせていただいて。

堀口 ほかにも、国内の大手住宅メーカーの役員の方にお話を聞きに行きましたよね。私の所属する経営学部や経営学研究科は特に企業との関係が強く、現役マネジャークラスの方を招いた授業も行われています。大手グローバル企業の社長なども参加していますね。私自身はアニメ業界にも知り合いがおり、興味のあるゼミ生をスタジオに連れて行ったこともありますね。

 この大学院が「キャリアアップのための人脈作りに有効」というのはまさにその通りで、実は企業も大学院生を探しているんです。優秀な人を確保するのが大変なこの時代、大学院で学んでいる人はそれだけのスキルがありますし、その中でも「国士舘の大学院生なら、あの先生のゼミなら大丈夫」という信頼も得ています。むしろ企業側も大学院生を見つけたいニーズがあり、ここでの出会いが転職につながるケースもあるでしょう。

 就職活動をする上では、人脈だけでなく、先生や大学のサポートも心強かったです。先生に毎日アドバイスをいただきながら、応募企業ごとの対策資料をまとめて。キャリア形成支援センターへも週4日ほど通い、模擬面接やエントリーシートの添削をしてもらいました。最終的に複数の内定をいただけましたが、自分1人ではできなかったと思います。

堀口 万さんは日本、中国、インドの大手企業で内定が出て、努力が実ったと思います。私のゼミ自体も修了生の就職率100%を維持できているので、キャリアアップのためにも大学院を活用して欲しいですね。

 ———学問を身につけるのは大学院に通う理由の大前提だが、2人の言葉から分かるように、次のキャリアに向けたネットワーク作りの場になっていることも重要だ。企業側も、大学院を「有望な人材が集結する大切な場所」として捉えているのであろう。

ビジネスの場で「この人は大学院に通っただけある」
と思われる教育

堀口 そもそも私は、社会人がステップアップする上で、大学院に通うことが重要なキャリアパスにならなければいけないと思っています。日本はその意識が低いのですが、むしろそれが「世界水準」なのです。

 過去に13年ほどドイツにいましたが、海外企業の幹部はほとんどが大学院を修了しています。然るべき学びを受ければ、今後のキャリアにつながることを海外の状況が証明している。だからこそ、ここでキャリアアップに役立つ学びを提供したいですし、修了生の仕事ぶりを見て「さすがこの人は大学院を出ている」と感じられるようにしたい。

 じゃあ何を教えるかというと、まずは英語と日本語の両方を使いこなせるように、言語能力を高めます。徹底的に英語文献を読み込み、発表する。万さんはもともと英語が得意だったので、むしろ日本語を上達させるためのレポート提出と、それを一緒に音読する時間を設けました。

 2年続ける中で日本語のスキルも上がりましたし、その結果として大学や学外の組織の日本語スピーチコンテストでも2回優勝することができました。

堀口 もう1つ、ビジネスの場で「この人は賢い」「頭が切れる」と思われることが重要で、そのためには理路整然と説明する“プレゼン能力”が大切です。そこで、毎週ゼミでは何かしらの発表を行ってもらい、それについて議論しました。

 これはいまの仕事にとても活きていますね。なぜなら私のマネージャーも「わかりやすく説明する能力」をとても重視するからです。大学院の2年間は、仕事の場で必要なコミュニケーション能力も養っていたと感じます。

堀口 大切なのは、大学院でキャリアに役立つ実用的なスキルを提供することです。研究室での活動の中にも、ビジネスに応用できるものはたくさんありますから。その中でもコミュニケーション能力にまで踏み込めるのは、個別指導の色合いが強い国士舘だからこそ。たくさんの人が受講し、先生が一方向で講義を行う大学院では難しいかもしれません。

 先生と修了生のグループLINEもあり、最新のビジネストピックも教えてくれて感謝しています。この前もAIに関する最新情報や、仕事での活用方法を教えてもらって。仕事に役立っていますね。

堀口 大学院は、世の中における「最新の能力」が身につく場所であるべきだと思っています。たとえばChat GPTなどのAIを使いこなせれば、仮にロシア語が読めなくても、ロシアとウクライナの最新動向をAIに翻訳させて、情報をキャッチアップできる。それをいち早く分析することで動く業界やビジネスもあるはずです。国士舘大学大学院は、最新技術が普及した先に必要な能力をいち早く身につけられる場でありたいですし、修了した後も情報を伝えていきたいと考えています。

 ———文中に登場した日本語上達のためのレポート提出と、それを一緒に音読する時間は、修了までの2年間欠かさずに続けられたという。学ぶ側の意欲とそれに応える教授の姿勢がなければ実現しなかっただろう。大学院の中には、大人数で画一的な講義を行うケースもあれば、堀口教授のように個別指導中心のところもある。一人一人の特性や熱量に応じた教育は、個別指導だからこそできることではないだろうか。


<PR>