「今年中にロシア軍をウクライナの隅々から追い出すことは極めて困難」

 ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州の前線全体で攻撃を継続している。ウラジーミル・プーチン露大統領は戦争に勝利するより第一次大戦のような消耗戦に持ち込み、エネルギーインフラ攻撃でウクライナを人質に取り西側の結束を揺さぶろうとしている。

 マーク・ミリー米軍統合参謀本部議長はウクライナが年内にロシア軍を領土から追い出すことに成功するか疑念を示す。

「軍事的な観点から言えば、今年中にロシア軍をウクライナの隅々から追い出すことは極めて困難だと考える。だからと言って、できないわけでも、起こらないわけでもないが、とてもとても困難なことだ。結局、この戦争も過去の多くの戦争と同様に何らかの交渉で終わるだろう。プーチンは今すぐ戦争を終らせるべきだし、終わらせることができる」(ミリー氏)

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、西側がウクライナへの戦車供与を決定すれば「ウクライナとその国民にさらに大きな問題を背負わせるだけ」と牽制した。

 ロシアとの間に緩衝地帯があるドイツにはウクライナに特定の兵器を供与すればドイツ、ひいては北大西洋条約機構(NATO)を戦争、最悪の場合、核戦争に巻き込まれてしまうとの恐怖心がある。

 狡猾なプーチン氏はこうした恐怖心を計算に入れている。ウクライナ戦争が悪化させるエネルギー価格の高騰とインフレ、経済安全保障を念頭に置いた中国とのデカップリングが進行する。ドイツは何とか景気後退入りを回避できる希望の光が差してきただけに、戦争の長期化で経済環境を悪化させるのは御免被りたいという打算が働いても何の不思議もない。