1月7日、3連休の初日に、何者かの爆破予告を受けたジェットスター・ジャパンの501便が中部国際空港に緊急着陸し、脱出シューターを使った緊急脱出が行われた。幸い不審物は見つからずに済んだが、乗客のうち5人が、脱出シューターで機外に出た際にコンクリートの地面に接触するなどして、けがを負った。また、滑走路が4時間半にわたって閉鎖されたため、発着合わせて約60便が欠航することになった。この種の事件を自ら経験し、調査もしてきた筆者が、危機管理や緊急脱出のあり方の観点から検証してみたい。
(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)
爆破予告から離陸まで17分、なぜか機長に伝わらず
報道を総合すると、今回の事件の経緯は以下の通りだ。
1月7日、午前6時18分、成田空港にドイツからの国際電話があった。「ジェットスター501便(成田発福岡行き)に爆弾を仕掛けた。マネージャーを出せ。出さなければ、貨物室に仕掛けた100キロのプラスチック爆弾を直ちに爆発させる」という主旨の話を英語で告げたという。
しかし、機は6時35分に離陸した。同53分に成田空港会社よりジェットスター側に連絡が入り、それを受けて、中部国際空港に緊急着陸することを決定、同7時40分頃に着陸し、滑走路から誘道路に出たところで、緊急脱出が行われたというものだ。
付け加えると、愛知県警の中部空港署に連絡が入ったのは7時35分頃で、中部空港会社から「爆破予告があり、中部国際空港に緊急着陸する」との内容であった。
この一連の流れを見ると、首をかしげざるを得ない点がある。
まず、成田空港会社に爆破予告の電話(6時18分)があってから、離陸(6時35分)するまでの17分間、501便に連絡が入らなかったことだ。連絡を受けていれば、離陸するわけがない。
いったい17分間、関係者は何をしていたのか?