日本は未曾有の大災害に見舞われたが、被害に遭っても冷静で動じない日本人の態度は海外で高い評価を受けているようだ。
人間は大きな災害に遭遇すると、将来的を案じるよりも、この時間を生きることにエネルギーを燃やす生き物なんだな。
太平洋戦争を生き抜いた日本人は、戦後の混乱の中でも、今、自分たちが生きているということを実感できたし、困難な状況を嘆く前に、生きる喜びを味わっていたはずだ。
原子力発電所の近くで被災した人たちだって、パニックにならず、今できることをやりながら、前を向いて生きている。
今回の不幸な災害をきっかけに、今まで日本人が失いつつあった気質、例えば礼儀正しさ、謙虚さ、勤勉さ、人情などが甦っているようだ。
日本は、もともと「相互扶助」の国だ。聖徳太子の時代から「和を以って貴しと為す」ってのが国是のようなもので、それが連綿と続いてきた。
「終身雇用」もその表れだ。大企業では社員の面倒をずっと見続ける制度が長い間定着していた。だから、みんな大企業のサラリーマンになりたがったんだよ。
ところがバブル以降に、欧米的な個人主義とか実力主義、成果主義なんてのがもてはやされるようになった。「勝ち組」という言葉が頻繁に使われるようになって、和とか礼節、謙譲という、長年培われた日本人の美徳が忘れ去られようとしていた。まるで明治時代の廃仏毀釈みたいなものだ。
そこに、この震災だ。最悪と言える災害の中で、なおも秩序を保ち、譲り合いを忘れない人々を見てると、日本人が大切にしていた「自分に恥ずかしくない生き方」というものが甦ったように、おれは感じるんだ。