こうして、昨年9月の「天宙平和連合」に送った安倍氏のビデオメッセージにつながっていく。首相在任期間が史上最も長く、また、「自由で開かれたインド太平洋」を提唱した安倍氏が、この団体と統一教会のつながりや、文鮮明の妻で教団主宰者の韓鶴子の存在を知らなかったはずがない。それでも安倍氏は「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」と言明している。

統一教会との関係、自民党はどうケリをつけるのか

 ここまでは世耕氏を反訴している側の主張を一方的に列挙しただけだが、自民党と統一教会の過去から現在まで続く「密接な協力関係」の主張については、証拠も示されている。それも、統一教会を「反社会的な団体であるとの印象を抱く者が少なくない」と断じる世耕氏が、自身と統一教会や原理研との関係を追及するようなツイートを「名誉棄損だ」と訴えたことにはじまる。どのような結果になるのか、司法判断が待たれる。その前に、世耕氏がどう反論するのだろうか。

 実はそのまたとない機会が、今週22日に予定されていた。この名誉毀損訴訟で世耕氏が東京地裁に出廷し、尋問に立つはずだった。ところが、ここへきて急遽、その期日が取り消されたのだ。

 安倍氏が命を奪われたことで、統一教会は再び世間の耳目を集める存在となった。ところが名誉を毀損されたはずの世耕氏にとっては、師事したはずの派閥のボスが「反社会的な団体」の大ボスを敬う姿も世間が知るところとなった。傍から見れば、目も当てられない。政治家としての説明責任を問われて然るべきだ。

 安倍氏の最側近で自民党の幹部が「反社会的な団体」として名誉毀損訴訟まで起こしている現実。自民党は統一教会との関係を早急に総括する必要がありそうだ。そうでなければ、安倍氏の国葬もあったものではない。(文中一部敬称略)