中国・習近平国家主席は「香港の息の根を止めようとしている」との見方も流れる(写真:AP/アフロ)

(平田 祐司:香港在住経営者)

ゼロコロナの上海とは異なり日常を取り戻しつつある香港だが……

 上海の長期にわたるロックダウンで日系企業の活動が止まり、在留邦人の日々の生活にも深刻な影響が出ていることは、日本でも連日報じられている。かたや、香港は新型コロナの新規感染者数が大幅に減少し、5月19日からは営業が禁止されていたバーやカラオケクラブも5カ月ぶりに営業再開した。

 マスクの着用義務(違反者にはHKD5000=約8万円の罰金)や入国時の強制隔離(最低1週間)、ワクチン非接種者のレストラン、スーパー等への立入禁止措置などを除き、ほぼ平常の暮らしに戻っている。

 しかし、厳しいゼロコロナ規制が続く中国の影響の他、世界的な資源高、サプライチェーンの寸断、そして主要国の金利引き上げの動きを受けて、香港経済の停滞が続いている。香港に明るい未来はあるのか。「特異な通貨=香港ドル」は生き残れるのだろうか。

 香港の中央銀行に当たる香港金融管理局(HKMA)は、5月12日から15日にかけて、総額175億8500万ドル(約2800億円)の香港ドル買い・米ドル売りの為替介入を3年ぶりに実施した。その規模は、為替介入の資金源になるMKMA決済性預金の約5.2%に相当する。

 香港ドルは、香港全域とマカオ、中国広東省の一部で流通する地域通貨だ。しかし、ドルペッグ制によって1米ドルはHKD7.75~7.85の変動許容範囲に固定されている。

 ペッグ制とは、簡単に言えば、自国通貨の発行量に見合っただけの米ドルを中央銀行が保有し、その裏付けによって自国通貨の信用を担保する仕組みだ。

 香港の場合、香港上海銀行、中国銀行、スタンダード・チャータード銀行が香港ドル紙幣を発券するたびに、同額の米ドルをHKMAに預けることでペッグ制が維持されている。つまり発券された香港ドル紙幣は、香港政府の米ドル資産によって100%保証されていることになる。

 但し、銀行貸し出しによる信用創造によって発行通貨量を上回るマネーサプライとなるため、厳密には香港ドルが本当に100%米ドルで信用担保されているか筆者は多少疑義を抱いている。ちなみに、22年3月末の香港のマネーサプライ(M2)は約2兆1000億米ドルで、それに対して4月末の香港の外貨準備高は4657億米ドルである。