お腹が空いていたのか、大きな声で鳴いていました。自分の家から出て、隣の定食屋さんの主人にねだっているようでした。「お客さんがひと段落したらね」。そう言われ、「わかった」と一声返事をしたところです。

 犬の名前はルー。家のお母さんが、野菜の行商に出かけるとき、通りの角まで見送ります。もうすぐ出発です。

 大きな家の玄関でたたずんでいました。写真を撮っていい?とアイコンタクトをとると、「きをつけ」のように姿勢を正したので、身体全体が少し縦に伸びました。

 ハノイの猫は、店の猫も家を守る猫も、出会った猫たちはみんな人と暮らす阿吽(あうん)の呼吸をわかっているようでした。