今後もますます中国化が進むボーテン

 少なくとも、ボーテンの現場はかなり中国化している。

ボーテンの町中では、中国系と見られる店が軒を連ねる

 ボーテンでは、ほとんどのものが中国語で書かれており(ラオス語も併記されているが小さい)、通貨は主に中国の人民元が使用されている。レストランのメニューは人民元で表示されており、商店に寄ったときは、客が中国のオンライン決済で支払いをしていた。

海誠ホールディングスのグループ企業である景蘭文旅集団が運営する景蘭ホテルでは、レストランのメニューが全て中国語・人民元で書かれていた

 町にいる人はほとんどが中国人だったように見えた。唯一、レストランの前で20人ほどのラオス人従業員と見られる若者たちが正月を祝う水かけを楽しむ場面に出くわしたが、それ以外はほとんどいなかったように思う。一方、建設作業員など、著者が話しかけた数人は皆中国人だった。出身地を聞くと、雲南省や四川省ということだったので、出稼ぎに来ていたのかもしれない。

 すでに中国化しているボーテンだが、それはこれからも深化していくだろう。主な開発企業である海誠集団は、中国語でボーテン経済特区のパンフレットを作成・配布している。またボーテンに近い雲南省の都市・景洪に展示場を開設して、中国企業と中国人の誘致に力を入れている。パンフレットには、「14万元(約230万円)からマンションの一室を購入できる」と書かれており、それは魅力的な安さだろう。

 ただし、現状として町はまだまだ未完成であり、人も少ない。今のボーテンは、中国ラオス鉄道の開通にあわせ、まずは町を開発するという開発先行型で変化しているのだ。

 中国には、「富を得るためにはまず道を造れ(要想富 先修路)」という言葉がある。経済合理性や需要よりも先に、まずはインフラを開発して発展につなげようというところだろうか。だからこそ、雲南省の辺境でも、シルクロードの砂漠でも、驚くほどのスピードで高速鉄道や高速道路の整備が進められているのかもしれない。そして、それは一帯一路という時流にのって国外でも実践されようになった。

 ボーテンにはどんな発展がもたらされるのか。外交関係樹立60周年の節目に中国ラオス鉄道という「道」を完成させる両国は、今後、「富」の獲得に向けても突き進んでいくだろう。ボーテンで見た驚愕の現場に思いを馳せつつ、著者はボーテンから昆明に帰還した。

中国の高速鉄道車両「和諧号」。全面開通する中国ラオス鉄道を走ることになるかもしれない。この鉄道は、中国とラオスに何をもたらすのか