『性格とは何か より良く生きるための心理学』を上梓した小塩真司・早稲田大学文学学術院教授

 雑誌やウェブ上には「性格判断(心理)テスト」や「心理ゲーム」がたくさん公開されているので、やったことがある人も多いだろう。星座や血液型といった占いも、類型によって性格の特徴を捉えようとする一種の試みや遊びだ。私たちは「私は~だ」「あの人は~だ」「この子は~だ」と自分や人の性格を知りたい、把握したいと考えている。性格を知ると日常生活の役に立つ、子供を育てるのが楽になる、人と付き合いやすくなる──といった期待をもっているからだろう。だが、性格を知ると本当に生きやすくなるのだろうか。

 性格は変わるのか、年齢とともに変化するのか。男女差や国民性・県民性はあるか、仕事や結婚がうまくいく性格はあるか。性格・パーソナリティの最新の研究結果を通して、人間や社会の本質を垣間見てみよう。『性格とは何か より良く生きるための心理学』(中公新書)を8月20日に上梓した小塩真司(おしお・あつし)早稲田大学文学学術院教授に話を聞いた。(聞き手:長野光 シード・プランニング研究員)

──性格の研究では、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる5つのカテゴリーで人間の性格の特性を分類、測定できるとあります。

小塩真司氏(以下、小塩):「ビッグ・ファイブ」とは外向性(Extraversion)、神経症傾向(Neuroticism)、開放性(Openness)、協調性(調和性、Agreeableness)、勤勉性(誠実性、Conscientiousness)の5つの性格特性によって、人間の性格全体を捉えようとする枠組みです。

 心理学研究では辞書を調べることが、性格特性を確認するために有効な手段だと考えられてきました。多くの人々が共通認識する人間の特徴は、「この人ってこんな人だよね」と、必ず言葉で表現されます。

「ビッグ・ファイブ」による分類も、もともとは辞書にある人間を形容する言葉を次々抜き出していって、データとして収集し、統計的に分類されています。それらの単語が階層構造のようにだんだんまとまっていって、ビッグ・ファイブという5つの次元になったんです。いずれの特性も、良い面と悪い面を合わせ持ちます。どれが高くても低くても、「こうであればすべてうまくいく」というわけではありません。

 それでは、ビッグ・ファイブを簡単に説明しましょう。