『データでわかる 2030年 地球のすがた』の著者、夫馬賢治氏のインタビュー

 コロナの次に来る感染症リスク、頻発する異常気象、ペーパーレスやマイ箸では解決できない森林危機、食卓から消える魚──。現在進行形の地球規模の長期的なリスクについて、グローバル企業や機関投資家が共有している危機感がある。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)投資はPRのための「イメージアップ戦略」ではなく、対策が遅れれば大きな損失を生み、市場撤退もありうる経営戦略やリスクマネジメントの問題だ。

 気候変動、農業、森林、水産、水、感染症、パワーシフト、労働・人権の変化を認識しているか。食糧危機や現代の奴隷制度、水を巡る社会紛争を、日本人の生活には関係のない遠くの問題だと思っていないか。過去の経験にとらわれず、情報をアップデートし続けているか。「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」という危機感を持ち続けている著者が、地球の持続可能性(サステナビリティ)の観点から「世界の今」を伝える。

データでわかる 2030年 地球のすがた』を7月9日に上梓した夫馬賢治(ふまけんじ)株式会社ニューラル代表取締役CEO(最高経営責任者)に話を聞いた。(聞き手:鈴木皓子 シード・プランニング研究員)

周回遅れの企業が目覚めた理由

──本書の執筆動機を教えてください。

夫馬賢治氏(以下、夫馬):タイトルに「2030年」と入れましたが、これから10年後、20年後、世界では今までとは違う形でいろいろな問題が起きます。例えば、地球温暖化や食料生産量の低下、森林破壊や漁獲量の減少、水を巡る争いは過去10年で顕在化しました。欧米では、企業や投資家までもがビジネス上のリスクと捉え、自主的に対策を打っていく姿勢を強めています。

 一方、日本の上場企業や機関投資家が気候変動などの環境問題やサステナビリティ、SDGs(持続可能な開発目標)といったテーマに関心を持ったのは、ここ2年くらいなんですね。大きなきっかけになったのは、2015年9月に国連サミットで採択されたSDGsを日本政府が2017年頃から提唱し始めたことでした。SDGsは2030年までに社会を持続可能にするための17の目標を掲げ、みんなで良い世界を目指そうというものです。日本政府が提唱したことで、企業の業界団体や様々なメディアが取り上げるようになりました。

 それ以上に日本企業の変化の要因になったのは、同じ頃に日本に到来したESG(環境、社会、ガバナンス)投資の潮流です。