8月17日、米商務省産業安全保障局(Bureau of Industry and Security)(以下、BISという)は、中国のファーウェイと関連企業に対する禁輸措置を強化する声明を発出した。
これにより、米国の技術やソフトウエアを使用して製造された半導体やソフトウエアのファーウェイへの供給が事実上、全面禁止となった。
また、同声明においてファーウェイの関連企業38社をエンティティリスト(EL)に追加するとともに、これまでファーウェイなどに付与してきた暫定包括許可(TGL:Temporary General License)も失効した旨を明示した。
ここで、なぜ米国がファーウェイに対する禁輸措置を強化するに至ったかについて、その原因を遠因・中間の原因・近因に分けて筆者の考えを簡単に説明する。
遠因:激しさを増している米中の対立は、覇権国・米国と新興国・中国の覇権争いであると筆者は見ている。
米国の覇権を盤石にしてきたものは科学技術の発展であることは論をまたない。中国が米国の覇権に挑もうとするなら、科学技術の向上は必須である。
このため、中国は、サイバースパイ活動などにより米国をはじめ先進国から最先端の技術情報を窃取していると米国は主張している。
中間の原因:中国政府は、米国の技術情報を窃取するために、自国の電気通信会社を通じて、米国で販売される中国製の電気通信の構成品及びシステムに、悪意のあるハードウエアまたはソフトウエアを埋め込む可能性があると米国は主張している。
そして、第5世代移動通信システム(5G)などのハイテク技術を巡る米中の技術覇権争いの中で、中国を代表するテクノロジー企業であるファーウェイが米国による圧力の矢面に立っている。
近因:ファーウェイ製の電気通信機器が安全保障上の脅威であるとして、米国は、同盟国などに調達しないよう呼びかけ、5Gからファーウェイの機器を排除しようとした。
しかし、同盟国の足並みが揃わず、かつ欧州やアジアでは、ファーウェイの機器を導入する国が多い状況において、米国はファーウェイに対する禁輸措置を講じ、ファーウェイの最先端半導体サプライチェーンの遮断を狙ったものである。