ドゥブロヴニク新市街の港を出たフェリーはまず45分かけてクロセップ島へ向かいます。

 このフェリーはいわば、島民の足。観光客以外はみんな顔見知りで、親しげに挨拶を交わしています。デッキにいた犬たちは、「朝市に行ってきたのかい?」と声をかけられ、うれしそうに応えていました。

 離島を往復するフェリーは、食料品や生活必需品などを運搬するという大切な役割も担っています。もちろん、キャットフードも積まれていました。

 フェリーをクロセップ島で降りると、このあとフェリーに乗り込む人の列ができていました。

「あら、大きくてステキな犬! ブービエ・デ・フランドルではないですか!?」
「そうだよ、よく知っているね。犬種を言い当てられたのは、初めてだ」
「1枚写真を撮らせてください」
「犬連れなので最後に乗船するから、少しだけなら時間はあるよ」

 飼い主の男性は、ベルギーとの国境近くのフランスに住んでいて、公共交通機関を乗り継いで、犬と一緒に旅をしているそうです。

 ブービエ・デ・フランドルは、児童向け文学やアニメで有名な「フランダースの犬」に出てくるパトラッシュの犬種です。アニメではハチワレのブチ模様として描かれていますが、原作の挿絵は、この犬と同じフォルムで描かれています。

 パトラッシュがもしこの黒い犬だったとしたら、いっそう哀愁を誘うような気がします。