新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発が世界中で進められているが、安全性の確認が二の次なのは問題だ

 8月11日、世界初の新型コロナワクチンがロシアで承認された。

 政府の規制当局が正式に使用できるワクチンとしてお墨付きを与えたことを意味しているが、世界初となった理由には裏がある。

 実は、ロシアのワクチンでは有効性と安全性を厳密に評価する第III相試験の結果が出ていない。

 ある程度大丈夫そうだろうという第II相までの段階で、国威発揚のため見切り発車したと見られているのだ。

 世界保健機関(WHO)の8月10日発表リストによれば、世界で実験段階にあるワクチン候補は139品目、ヒトで評価する臨床試験段階に到達したのは28品目で、うち6品目で第III相試験が実施中とされている。

 この6品目の中には、ロシア製ワクチンは入っていない。

 リスト上は初期の第I相試験段階として、ガマレヤ・リサーチ・インスティテュートの品目が掲載されている。どうやらこれが件のロシア製ワクチンのようだ。

 ニコライ・ガマレヤ(1859 - 1949)は帝政ロシア/ソビエト時代に活躍した微生物学・ワクチン研究の権威で、彼の名にちなんだ研究機関は1891年に設立され、モスクワに拠点を置いている。

 興味深いことに、今回開発されたワクチンは「スプートニク5号」と命名されている。

 スプートニク5号は1960年に動植物を乗せ地球軌道上に到達し、無事生還した史上初の人工衛星だ。