1944年10月22日、ブルネイからレイテ湾へ出撃する旧日本海軍の栗田艦隊。 右から長門・武蔵・大和、高雄型重巡洋艦4隻(資料写真、米海軍歴史センター所蔵)

 戦後になって調査・研究が行われ、次々に明らかになった大日本帝国・陸海軍の内幕。陸軍、海軍ともに「作戦系」と「情報系」の参謀本部の間に壁があり、作戦系では情報が軽視されていたこともその1つである。

 大和ミュージアム館長の戸高一成氏と、『独ソ戦』『「砂漠の狐」ロンメル』などの著書がある現代史家の大木毅氏は、旧日本軍の将校や下士官兵など歴史の当事者に会って、体験談や所見を直接聞いてきた。その2人が対談し、旧日本軍の秘話、組織の実態を初公開。『帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる』(戸高一成・大木毅著、角川新書)から一部を抜粋・再編集してお届けする。(JBpress)

陸軍は一枚岩ではなかった

帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる』(戸高一成・大木毅著、角川新書)

大木 私が最初にかかわった『歴史と人物』(中央公論社)という雑誌では、「参謀本部と太平洋戦争」という特集を組みました。

 参謀本部には、作戦課や編制課など、いくつも部課があります。その各課に在籍し、実際にそこで仕事をした元参謀に手記を書いてもらおうという企画です。

 このような特集を編むなかで思ったのは、陸軍は一枚岩ではない、ということです。一方、海軍は、良かれ悪しかれ世帯が小さい分、一枚岩だと思います。