海上自衛隊のこんごう型護衛艦「みょうこう」(出所:海上自衛隊ホームページ

 日本の領土、沖縄県・尖閣諸島が危機的状況を迎えている。武装した中国船が尖閣沖の接続水域に居座り続け、さらには領海に侵入して日本の漁船を追い回すまでになった。だが、日本政府は中国への配慮なのか、なにか裏で取引をしているのか、尖閣を守るための具体的な行動を一切とろうとしない。

 8年前、その尖閣諸島・魚釣島に単独で上陸し、山頂に上って日の丸を掲げた人物がいる。元海上自衛官の伊藤祐靖(いとう・すけやす)氏だ。

 海上自衛隊では「特別警備隊」の創設メンバーに加わり、先任小隊長として隊員たちを鍛え上げた。特別警備隊は、1999年の「能登半島沖不審船追跡事件」をきっかけに創設された特殊部隊である。

邦人奪還 自衛隊特殊部隊が動くとき』(新潮社)

 その伊藤氏が、6月に小説『邦人奪還 自衛隊特殊部隊が動くとき』(新潮社)を上梓した。実際に特別警備隊を立ち上げ、自らも隊員として訓練を重ね、さらには尖閣に泳いで渡った経験をもつ伊藤氏にしか描けない迫真の「ドキュメント・ノベル」である。

『邦人奪還』は一体どこまで自衛隊や日本の国防の現実を反映しているのか。同書のリアリティについて、伊藤氏に聞いた。(JBpress)

意識をコントロールする隊員たち

──『邦人奪還』には、特別警備隊の隊員同士がテレパシーみたいな感じで意思疎通をする場面が出てきます。本当にあんなことができるんですか。