5月22日、バリ島の伝統的衣装を扱う店の開店準備をする女性。マネキンもマスクを着用している(写真:AP/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 インドネシアの世界的観光地であるバリ島。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環として外国人の入国制限を実施しているため、海外からの観光客訪問は現在もほぼ途絶えたまま。当然ながら、それに伴う観光業の収入が激減し、「観光州」として危機的状況を迎えている。

 バリ州政府や観光業者、各種団体は一刻も早い制限解除でビーチなどの再開を目指して努力を続けている。ところが、こうした関係者の神経を逆なでするかのように、バリ島にコロナ禍以前から滞在している長期滞在の外国人などがマスクなしのパーティーや密集状態での宗教的行事、サーフィンなどを行い、地元保健当局から相次いで「ルール違反」を指摘されている。

 バリ島民や観光業関係者などからも、「バリ島全体の努力に水を差す行動であり、これでは再開が遠のくばかりではないか」と、彼らに対する不満と怒りが噴出しているのだ。

観光客激減が島民の生活直撃

 6月24日現在バリ州のコロナウイルス感染者数は1158人で感染死者は9人に留まっている。インドネシア全体での感染者数は4万9009人、感染死者数は2573人(いずれも24日現在)ということを考えれば、バリ州の感染レベルは全国レベルでは決して高くはない。

 しかし、バリ島のングラライ国際空港は世界各国から直行便が就航する空港だ。もしも感染防止対策の規制を緩和、あるいは解除すれば、一気に海外からの観光客が押し寄せることが予想される。

 その場合、バリ島に向かう直行便の出発地でのコロナ検査か陰性証明書の確認、さらにバリ島到着時のコロナ検査、検疫体制、さらにバリ島内での感染防止対策を万全にしない限り、感染が瞬く間に拡大する懸念が拭えない。逆に言えば、そうした万全の態勢がなければ、バリ島から帰国した観光客がそれぞれの帰国先で感染源となる可能性を排除できない。そうしたジレンマがあるのだ。

 その一方でバリ島の主要産業は、ホテル、飲食店、ガイド、観光バスなどの交通機関といった観光産業、多くのバリ人がこれに従事、その収入で生活していているという現実問題もある。