名勝および天然記念物に指定されている吾妻峡(吾妻渓谷)。当初のダム建設予定地に含まれていたが、予定地が移動されたため幸いにも一番の観光スポットは残された
吾妻峡にかかる猿橋

 2009年の騒動が収まると多くの人の関心が薄れていったが、再びスポットライトが当たったのが、去年の台風19号による豪雨だった。「八ッ場ダムがあった(貯水可能な状態だった)から利根川の氾濫が防げたのでは」という意見がネット上に出回ったのだ。

 実はタイミングよく10月から、ダム本体の強度や地盤の安全性などを確認するために、水を貯める試験を始めたところだったのだ。台風の豪雨によって吾妻川流域から流れ込んだ雨水をダム湖に貯め込んだことにより、予定より3カ月程度早く最高水位(満水)まで上昇した。

 八ッ場ダムの効果がどれほどだったのか。直接的ではないが、以下の数値が国土交通省から発表されている(https://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000474.html)。八ッ場ダムを含む7つのダムに貯水したことにより、群馬県伊勢崎市付近の利根川の水位は約1メートル下がった(速報値)、と推定されるそうだ。

台風の豪雨による雨水で水位が上がった八ッ場ダムを八ッ場大橋から撮影した。泥などが交じり茶色に濁っている(2019年11月4日撮影)
八ッ場大橋から反対側の上流方向を見たところ。遠くに見えるのは一つ上流にある不動大橋