最近、様々な状況で走らせ、多くのことを考えさせられたクルマがある。

BMW アクティブハイブリッドX6 (c)BMW

 「BMWアクティブハイブリッドX6」。大型重量級のいわゆるSUV(Sport Utility Vehicle)にハイブリッド動力システムを搭載したモデルである。

 最初にお断りしておくならば、移動空間としての乗用車という私自身の基本的な評価軸に当てはめた場合、手ばなしで高い評価を与えられる存在ではない。ブランド力を前面に押し出し、過剰であることに価値を見出す人々に向けた商品企画である。

 では、何に「考えさせられた」のか。

プリウスのハイブリッドシステムを徹底的に分析した欧米勢

「2モードハイブリッド」の心臓部。濃いブルーの筒状部品がモーターで、2つを組み合わせて駆動と減速時の発電、エンジンによる発電に使い分ける。両側と中間に遊星歯車(プラネタリーギア)を3セット組み込んで、動力混合と同時に7段の変速を行う。トヨタ方式はこの動力混合と変速(連続無段型、つまりCVTと同様)のための遊星歯車は1セットで済ませている。 (c)General Motors

 このクルマに搭載されているハイブリッド動力システムは、2004年にGM(ゼネラル・モーターズ)とダイムラー(当時はダイムラー=クライスラー)が共同開発を進めていることを公表、それにBMWが加わった(2006年から)プロジェクトの産物である。

 すでに2008年にはGMが、翌年にはメルセデス・ベンツが、アメリカ市場を皮切りにこのテクノロジーを実装した量産車を送り出している。しかし日本市場に「上陸」してきたのは、このX6が初めて、ということになる(国内での予約受け付けは2010年7月に開始)。

 「2モードハイブリッド」と名付けられたその基本メカニズムを見ると、先行したトヨタ自動車の「動力混合型」ハイブリッドシステムを徹底的に分析し、駆動力を生み出す機械システムとしてそれを超えるポテンシャルを実現することを目標にしたものであることが読み取れる。

 1997年に初代「プリウス」が発売された直後、月間の生産計画はわずかに200台だったのだが、海外の自動車メーカーが日本で購入して(もちろん当時は日本仕様しかない)、本国に送ったケースがかなり多かったはずだ。私もある雑誌の長期テスト担当としてかなり早い時点で乗り始めていたのだが、「なかなか手に入らなくて・・・」とボヤく海外メーカーの日本人スタッフが何人かいたものである。

1900年、若きフェルディナンド・ポルシェがオーストリアのローナー社で設計し少数が作られたハイブリッド車。エンジンで発電し、4つの車輪に組み込んだモーターを回して走る。今日流に言えば「インホイールモーター」方式の「シリーズハイブリッド」であり、「4輪駆動」としても世界初の自動車だったとされる。ここから110年、我々はどこまで進化したのだろうか。 (c)Porsche

 あの時点でも「ハイブリッド動力システム」という考え方そのものは珍しくはなかった。歴史を遡るなら、フェルディナンド・ポルシェ博士がその自動車設計者としての経歴の初期、1900年に、オーストリアで作った車両は今で言うシリーズハイブリッド(エンジンで発電機を駆動し、その電力でモーターを回す)方式であり、しかも車輪の中にモーターを組み込む「インホイールモーター」方式であった。自動車125年の歴史を振り返れば「世に新しきものはなし」なのである。

 1980~90年代にかけても排ガス規制の強化を受けて、ハイブリッド動力化や純電気動力化(つまりEV)が様々に試みられた。主要なメーカーはそれぞれにそうした試みをした上で、市場に投入する製品としては成立しない、と判断した。

 そこにトヨタが新しい「動力混合」のアイデアと、その実用化に向けて「現実の市場を開発試験の舞台にする」ぐらいの覚悟で、初代「プリウス」を投入してきた。