2011年2月、ウクライナの原油パイプライン「オデッサ・ブロディ」はアゼルバイジャン原油のモズィリ製油所(ベラルーシ)への輸送を開始した。

 2005年以来、ロシア原油のリバース(南方向)利用に供されていた同パイプラインは、2001年の完工から10年目にしてついに、当初の計画通りの輸送、すなわち非ロシア原油の北方向への輸送を開始したことになる。

 ベラルーシにとっても、ロシアによる原油供給源、輸送ルートの独占を崩す画期的な出来事である。なお、「オデッサ・ブロディ」原油パイプラインの経緯の詳細については、拙稿「ウクライナとロシア原油」(Pdf)を参照していただくと幸いである。


オデッサ・ブロディ・原油パイプラインとは何か

 「オデッサ・ブロディ」パイプラインとは、非ロシア原油をロシアを経由せず輸入することを目的としてウクライナ政府が計画・建設した原油パイプラインである。

出典:田畑伸一郎編著「石油・ガスとロシア経済」、253ページ

 ソ連崩壊直後、ウクライナ政府は、安全保障上の問題から、ロシア以外の原油供給源の確保に迫られ、中東・カスピ海原油のタンカー輸入を念頭にした石油ターミナル建設と原油パイプライン敷設計画を立ち上げた。

 黒海沿岸のオデッサに石油ターミナル「ピヴゥデンヌィ(ロシア語ではユージヌィ)」港を建設し、そこからパイプラインを650キロ敷設し、ブロディで既存のドルージバ(友好)原油パイプラインと接合する「オデッサ・ブロディ」計画である。

 ドルージバ・パイプライン下流には、ウクライナの製油所だけでなく中東欧諸国があるため、将来的には中・東欧諸国にも非ロシア原油を供給する、という目的も付け加えられた。