(尾藤 克之:コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)
先日、建て替えが検討されてきた「中野サンプラザ」を含む中野駅前の再開発について、新たな方針が発表されました。中野区の酒井直人区長は「サンプラザのDNAを継承し、デザインや名前についても引き継いでいく」方針を示しています。さらに、中野サンプラザを解体して最大収容人数7000名の多目的ホールなどの施設をつくるとしています。
中野区長選挙について解説します
筆者は中野区民で有権者の1人ですが、この発表には強い違和感を覚えました。昨年6月に行われた中野区長選では、中野サンプラザの解体問題が争点になりました。解体を主張していた前区長が敗れ、計画の全面見直しを訴えた酒井区長が誕生します。ところが3カ月後、サンプラザの解体を進めると発表します。
選挙戦を、メディアはどのように報道したのでしょうか。産経新聞(2018.6.4)は、「田中元区長がサンプラザと区役所を解体し、1万人規模のアリーナを中心とする集客施設の建設を計画しているプランに対して、他の3候補は反対か見直しの姿勢を伝えた。酒井氏も『計画ありき』ではいけない」と主張したとあります。
選挙結果を受けて、毎日新聞(2018.6.15)は、「新区長が初登庁 サンプラザ解体、凍結表明」と紹介します。「酒井氏は就任会見で、区長選で争点となったサンプラザ解体や1万人収容のアリーナ建設などの中野駅北口整備計画について『一度立ち止まる』と述べ、凍結を表明した」(原文ママ)とあります。
その後、サンプラザ解体は物議を醸すことになり、大手メディアにも波及していきます。1月27日放送のTBS系「噂の!東京マガジン」では、『中野サンプラザ解体騒動めぐり新旧区長を直撃』として、いち早く、解体問題を取り上げました。筆者も専門家として「政治家の言葉」をテーマに解説をしています。
不可解なサンプラザ解体
YouTubeに「中野に一万人収容アリーナと公式で使えない陸上トラックはいらない!!~中野区長選 酒井直人候補・中野区議補選 杉山司候補 街頭演説~応援 立憲民主 枝野幸男代表、蓮舫副代表、長妻昭代表代行 18.6.8 – 31.01.2019, 13_36」*1という動画がアップされていたので紹介しましょう。
蓮舫副代表の応援演説は、4分50秒からはじまります。争点は「サンプラザ建て替えの是非」だとし(5分58秒頃)、少子化、高齢化、社会保障の増加など、もっと必要な施策があることを説明します。1万人規模のアリーナが必要か、収入だけでやっていけるのか、行政が考えるべきはオリンピックのあとだと問題提起を促がします。
枝野幸男代表の応援演説は、7分29秒からはじまります。サンプラザは若者にとってあこがれの舞台であること。2000人規模のホールは時代に即した理想的なサイズであること。中野の街とマッチしてブランド力があることを力説します。
*1 https://www.youtube.com/watch?v=_llRo0kqx8I&t=362s
「中野に一万人収容アリーナと公式で使えない陸上トラックはいらない!!~中野区長選 酒井直人候補・中野区議補選 杉山司候補 街頭演説~応援 立憲民主 枝野幸男代表、蓮舫副代表、長妻昭代表代行 18.6.8 – 31.01.2019, 13_36」