(北村 淳:軍事社会学者)
トランプ政権は、アメリカの安全保障上最優先の目的を「国際テロリスト集団との戦いに勝利すること」から「軍事大国との対決に打ち勝つこと」へと転換した。その国家戦略にしたがって米軍当局は主たる仮想敵を中国とロシアに設定し直し、新たな戦略の策定と、それを遂行するための組織や装備の見直しを推し進めている。
しかしながら、オバマ政権下での国防予算大幅削減の影響はいまだに大きい。とりわけ建造にもメンテナンスにも莫大な予算と日時を擁する軍艦を運用しなければならない海軍は、355隻艦隊構築という法的バックアップを受けたとはいえ、国防戦略の抜本的転換への適合に苦闘しているのが現状だ。
連邦議会が危惧する空母戦力
とりわけ問題になっているのは、米海軍が依然として主たる戦力とみなしている空母戦力に関してである。
たとえば、アメリカ連邦議会では共和党・民主党を問わず、アメリカ海軍力の表看板とされている空母戦力が惨憺たる状況に陥りつつあることに対して、海軍首脳の責任が追及されている。
連邦議会は予算割り当てを通して軍隊を制御する(いわゆるシビリアンコントロール)責務を負う。そのため連邦議会が、「空母建造やメンテナンスに莫大な国家予算を投入しているにもかかわらず、空母戦力が海軍の運用計画とはかけ離れた状態に陥っているのは、税金の大いなる浪費である」と財政的側面から海軍首脳を批判するのは当然である。