中国海軍の094型原子力潜水艦(出所:Wikipedia

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(北村 淳:軍事社会学者)

 ベトナムの漁業関係者がソーシャルメディアに掲載した情報によると、先月、多数のベトナム漁船群が操業していた西沙諸島周辺海域で、ベトナム漁船のまっただ中に中国海軍原子力潜水艦が突如浮上した模様だ。

 ツイッターに掲載された写真が事実であるならば、ベトナム漁船群の直近に姿を現した潜水艦は中国海軍094(09-Ⅳ)型弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(いわゆる戦略原潜)である。

浮上した原潜の写真(出所:「Duan Dang @duandang」ツイッター)

原潜の浮上は異常事態

 第1次世界大戦や第2次世界大戦で用いられた潜水艦は、敵から身を隠す必要がある場合に「海中に潜航することができる軍艦」であった。つまり、基本的には海面を航行し、必要に応じて海中に身を隠して行動する仕組みとなっていた。

 これに対して現代の潜水艦は「海中に潜航することができる軍艦」という位置づけではなく、基本的には「海中で作戦行動を継続する軍艦」という位置づけになっている。すなわち、基地周辺海域などでは海面に姿を現したまま航行するものの、ひとたび海中に姿を消すと、帰投するまで海中を潜航し続けて行動することになるのだ。