前々回(「中国とモンゴル:中国を毛嫌いするモンゴル人」)のモンゴル人に続き、今回はウイグル人を取り上げる。現在の中華人民共和国において彼らは「中華56民族」の1つである「ウイグル族」に分類されている(「中華民族」の歴史的経緯については、既に書いたので繰り返さない)。
これに対し、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長は「私たちはウイグル人です。中国人ではありません。中国政府は私たちの母国を1949年に占領し、そのあと中国政府は私たちの母国の名を東トルキスタンから新疆に変えました」と述べている。
また同議長は、「今日、もし東トルキスタンに行けば持てる者が漢族であり、持たざる者がウイグル人であることが昼と夜のごとく明確に分かります」とも述べている。中国政府と世界ウイグル会議の一体どちらが正しいのだろうか。これが今回のテーマである。
中国公式説明の嘘
中国系の日本語ウェブサイトによれば、中国における「ウイグル族」の公式説明は一般に次のようなものらしい。ちょっと細かい歴史の話になるが、一生懸命勉強したので、暫くお付き合い願いたい。
(公式説明)
● ウイグル族は中国北西部の長い歴史を持つ民族の1つである。「ウイグル」とは「団結、連合」を意味する。人口は約721万人、大多数がイスラム教を信仰する。
● 主に新疆ウイグル自治区に分布し、天山以南の各オアシスに住んでいる人が多い。ウイグル語はアルタイ語系突厥語派に属し、アラビア文字を表音文字として使う。
● 祖先は紀元前3世紀以降中国北部に住んだ遊牧民族「丁零」、その後の「鉄勒」に遡る。「鉄勒」は西テュルク汗国の一部であり、7世紀には回紇汗国を建国し、唐朝と友好を旨とした従属関係を結ぶ。
● 「回紇」は後に「回鶻」と改称され、9世紀に新疆に移住して地元の各民族の住民と互いに融合し合い、次第にウイグル族に発展した。
(筆者解説)
回紇(ウイグル)が唐と「従属関係」を結んだとあるが、歴史書によれば、8世紀のモンゴル高原では東突厥を滅ぼした回紇が回鶻可汗国を建て、唐朝とも友好関係を保ちながら、独自のシルクロード交易で大いに栄えたという。