1990年代後半以降、爆発的に普及したインターネット。日本国内の利用者数は約8800万人、人口普及率が69%(いずれも2007年末現在)に達し、もはやネット抜きでは社会や経済の在り方を語れない。しかも、利用するためのブロードバンドサービスは、定額料金制で使い放題。ところが、こうした普及に伴い、「ネット混雑」という問題が深刻化し始めた。(本稿中意見にわたる部分は筆者の個人的見解です)

 日本では、ブロードバンドサービスが世界最速・最安値で提供されている。これがインターネットの利用を急速に押し上げ、ネット上の情報流通量が劇的に伸びている。過去1年間で約2割増、3年では約2倍という驚くべきペースなのだ。

 

 その背景としては、動画コンテンツの急増を指摘できよう。YouTubeやニコニコ動画に掲載される動画は情報量が多く、個人間で写真・ビデオのやり取りが活発化し、ネット混雑に拍車を掛けている。

 また、SaaS(Software as a Service=サービスとして提供されるソフトウエア)と呼ばれるサービス市場も最近、急速に拡大している。事業所などが購入したパッケージソフトをパソコンにインストールして使うのではなく、ネット経由でソフトを入手して利用するサービスを指す。

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 例えば、グーグルは自社サイト上で、文書作成や表計算のソフトをセットにした「Googleドキュメント」、スケジュール管理の「Googleカレンダー」などを無料で提供している。また、セールスフォース・ドットコムは顧客管理システムが中小企業などで人気を呼び、サービス契約企業数を大きく伸ばしている。こうしたSaaSの利用が更に拡大すると、常に端末とSaaS事業者との間で膨大な情報のやり取りが生まれ、ネット上の情報流通量は加速的に増加する。

 別の要因として挙げられるのが、モノとモノとの間の通信。例えば通信機能を持つ自動車部品に不具合が発生した場合、その部品が直接ディーラーに「故障情報」を発信し、速やかに顧客対応が行われるようになる。また、路上にセンサーを大量配備し、車と車、人と車がぶつからないようにする仕組みも数年で実用化に目途がつく可能性がある。

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 このように、「モノがしゃべる」「モノ同士が勝手に情報の受発信を行う」技術が普及していくと、ネットワーク上の情報流通量は幾何級数的に増えてしまう。

 今や、情報大爆発の時代。しかし、我々は膨大な情報量を支えるだけのインフラ(ネットワーク設備)を持っているのだろうか? 世界で最もブロードバンド基盤の整備が進んだ日本だが、実は「ネット混雑」という難題に直面しなければならない最初の国でもある。