1950年代から60年代にかけて一世を風靡したハリウッド黄金時代の美のアイコン、エリザベス・テイラー(愛称リズ)が亡くなった。その悲報に接し、あの吸い込まれてしまいそうな紫の瞳と端正な容姿を思い出された方も多いことだろう。

ハリウッドのクレオパトラ

エリザベス・テイラー、リチャード・バートン競演映画を集めたDVD

 子役、青春スターを経てメロドラマの主役を張れる美人女優へと成長した彼女が『ジャイアンツ』(1956)で見せた堂々たる演技は特に印象深い。

 また、映画界に於ける唯一無二の存在へと上り詰めることになる大作『クレオパトラ』(1963)での存在感も忘れられない。

 この映画、途中、リズが生死の境をさまようほどの大病に見舞われ撮影は中断。

 さらにその浪費癖から製作費が莫大なものとなり、20世紀フォックスを倒産の危機へと追い込んだことで、リズ自身が「ハリウッドのクレオパトラ」と呼ばれるようにもなった。

 さらに「ダブル不倫」となったアントニー役のウェールズ人俳優リチャード・バートンとの「世紀のロマンス」に芸能マスコミは沸き、世間のあまりの騒ぎぶりに、バチカンからも不倫への非難コメントが発表される異例の事態ともなった。

 続く共演作『予期せぬ出来事』(1963)のあと、正式に結婚にこぎつけた2人は、その後しばらく共演作を撮り続けることになる。

 マスコミに追われる私生活までもが演技の場と化す一方で、様々なシチュエーションの男女関係が描かれる共演作での「映画の中の世界」も逆に現実そのものなのではないかと言われる状態が続いていくことになる。

 ゴシップを肥やしに脚光を浴び続けるワイドショー文化、私生活がニュースになる虚像と実像のボーダーラインを失った今風に言えば「セレブ」なる存在の原点と言えるだろう。

 2人の共演作は、興行的にも映画作品としての出来も凡庸で、今では忘れられてしまったものも多い。どれも複雑な男女関係を中心に描いているため、あまり恋愛ものが得意ではない男性諸氏は初めからパスしてしまうケースも多いだろう。