今回の日本の震災の影響を受け、米国で業務用ビデオテープや電子部品などの買い占めが始まっていると米ニューヨーク・タイムズが報じている。
例えばハリウッドの映画スタジオやテレビ番組の制作現場でよく使われる「HDCAM-SR」はソニーが開発したHDTV(ハイビジョン)撮影用のビデオテープで、生産しているのは同社だけ。ソニーはこれを仙台の工場で作っているが、その工場は操業停止している。
この情報がハリウッドのエンターテインメント業界に流れ、今、映画スタジオなどに機材を納入する業者がテープの確保に奔走しているという。
業者には在庫がないわけではない。しかし今後いつ供給が再開されるか分からない状況で、業者は世界中の仕入れ先に連絡を取り在庫を確保しようとしている。
ある業者は「今は、送料が余分にかかろうが、高値になろうが仕方がない。顧客のために可能な限り買う」と話している。
その一方で業者は一般顧客への販売を控えている。この状況を知った一般の人にテープを買い占められ、ネットオークションで10倍もの価格で売られるという事態だけは避けたいのだという。ハリウッドではこうしたことが連鎖して、ビデオテープの品薄状態が続いている。一種のパニック状態に陥っているとニューヨーク・タイムズは伝えている。
部品1つでもボトルネックに
今回の震災は、普段から余裕を持って部品在庫を確保しているメーカーにも少なからず影響を及ぼしているという。例えば、通信機能を持つ電力計量メーター、いわゆるスマートメーターを手がけている米エシュロンは、震災発生の直後から自社のサプライチェーンに及ぼす影響について調査した。
日本からの部品の供給状況を確認し、50の重要部品が供給されている25のサプライヤーをリストアップし、1社ずつ確認を取った。結果はそれぞれの工場が被災していないことが分かり一件落着だったが、今後のことを考えると懸念も多いという。
部品メーカーが生産を続けられるのは、原材料の供給が止まらないことが条件。薬品やごく小さな部品1つでもストップすれば、それがボトルネックとなって、サプライチェーン全体が止まる。