カメラの前で圧力 「トランプ流」に屈した安倍首相、貿易協議に同意

米フロリダ州パムビーチにあるドナルド・トランプ米大統領のリゾート施設「マーアーラゴ」での会談中、報道陣に応じるトランプ大統領(右)と安倍晋三首相(2018年4月17日撮影)。(c)AFP PHOTO / MANDEL NGAN〔AFPBB News

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 安倍晋三首相が4月末に訪米し、ドナルト・トランプ大統領と首脳会談を行った。5月と6月にも会談の予定があるという。日米両首脳の関係はきわめて親密に見える。両首脳は一体どんな絆で結ばれているのか。また、米国側の反トランプ勢力は「敵」の友に等しい安倍首相をなぜ批判しないのか。

 安倍・トランプ関係について、ワシントンを拠点にここ2年半ほど考察を続けてきた体験を基に論じてみたい。

批判されなくなった親密すぎる関係

 安倍首相はこの4月26、27日の両日、トランプ大統領と長い時間をともに過ごした。公式会談に始まり、食事会、ゴルフ、メラニア大統領夫人の誕生パーティーでの懇談と、異例なほどの緊密な交流だった。

 トランプ大統領と他国の首脳との関係をみると、この交流がいかに特別かが分かる。つい最近の韓国の文在寅大統領の訪米では、首脳同士が1対1で過ごす時間はほんの数分だった。他の主要同盟国の最高指導者たちのトランプ大統領との接触をみても、安倍首相がどれほど特別かが歴然とする。なにしろ安倍首相はトランプ大統領との顔を合わせての会談が今回で10回目、電話での会談を含めればもう40回ほどになるというのだ。

「世界各国の指導者のなかでも安倍首相はトランプ大統領との緊密な個人的関係を築いた、きわめて珍しい人物である」――トランプ大統領の批判に徹するワシントン・ポストも、安倍氏のトランプ氏との仲をごく客観的な論調で強調した。この論評には、トランプ大統領は他国の首脳とは容易に親しげな関係にはならない、という前提があった。だから安倍氏の外交手腕への礼賛だともいえよう。

 しかし2018年の前半ごろまでは、米国の主要メディアでも安倍・トランプ関係を批判的に評する論調も珍しくなかった。日ごろトランプ政権を支持することの多いウォール・ストリート・ジャーナルでさえ、「トランプ・安倍は相棒関係」という見出しの記事で、安倍氏がトランプ氏に追随しすぎるのでは、という批判的なトーンをにじませていた。ニューヨーク・タイムズも「安倍首相はトランプ大統領の政策にすべて賛成する」という趣旨の記事を掲載し、パリ協定から離脱するトランプ大統領の決断に安倍首相が反対を述べなかったことを、とくに批判的に報じていた。