森林そして水資源は地球システムにとって必須、ヒトの生存には死活的に重要で、しかも希少である。

森林・水資源本位制の通貨

7000人で一斉植林、ギネス記録更新 フィリピン

森林を新通貨の担保に。写真はフィリピンでの植林風景〔AFPBB News

 そこでこの2つ、森と水を組み合わせて裏づけとし「本位」とする通貨を創出し、ドルに代わる国際通貨とすればよい。「金本位制」ならぬ「森林・水資源バスケット本位制」の通貨を作れという提案がある。

 アヴィナシュ・パソードが、随所でそんなことを言っている。

 突飛な話を持ち出す人物が、浮世離れした変人とは限らない。それどころかパソードとは、その名を知らなければ為替の世界で「もぐり」扱いされてもおかしくないくらいの著名人だ。

 1966年、西インド諸島バルバドスにインド系移民の子として生まれたパソードは、ロンドンの金融街シティで、為替アナリストとして早くから注目を浴びた。JPモルガンの為替・市況調査部門をワールド・ワイドで率いる地位に就いたのが、弱冠27歳の時だ。

 その頃は専門誌の選ぶ為替アナリストランキングで、トップ3に数えられることが何度か。後、グローバル・カストディ業務最大手のステート・ストリート銀行へ移り、ここでも世界全体のリサーチ部隊を束ねる長を務めた。

アヴィナシュ・パソードの提案

 職歴・履歴をいくら羅列してもいいけれど(Wikipediaには恐らく本人が書いた長文の解説あり)、要するに外為マーケットを観察することで人となり、金融のプロたちから得た声価をテコとして当代一流の論客となった専門家であって、ヒトを食ったことはあっても、カスミだけは食ったことがないだろう人物である。

 いまパソードがどんな提案をしたか原文*1を訳出しておくと、

 〔現行ドル本位体制が抱える問題への〕解決策は、IMF(国際通貨基金)が新しい通貨を発行することだ。発行主体は、国際的な条約で成立根拠を固めた組織であればIMFでなくてもよいが、いずれにしろそういう国際組織が新種の通貨を発行するのである。

 新通貨というのは、〔IMFが計算単位・準備資産として用いる特別引出権=SDRのような〕バスケット・カレンシーや、帳簿に記載する時の単位としてしか使えない類のものではない。実物資産との兌換性を欠く通貨しか持っていない国々に無料で支給されるようなものでもなく、何か、実体としての資産に裏打ちされたハードカレンシーだ。

*1=Avinash Persaud, 'A Note on the International Monetary Problem' in Jean-Paul Fitoussi, Joseph E. Stiglitz and the Paris Group Ed., "The G20 and Recovery and Beyond: An Agenda for Global Governance for the Twenty-first Century" (Columbia University, LUISS and OFCE, February 2011)