絶大な人気を誇る「モナリザ」ほどではないが、パリ・ルーブル美術館に新しいスターがお目見えした。その名は「Les Trois Grâces(レ・トワ・グラース=三美神)」。ドイツルネッサンスを代表する画家の1人、クラナッハの作品である。
今まで人目に触れることのなかった名作
板 油彩 ルーブル美術館所蔵
ミステリアスな表情を持つ官能的な裸婦像は、この画家の特徴として知られるところ。
三美神という神話をモチーフにしているが、そのポーズや画中にちりばめられた要素は全くステレオタイプなものではなく、この画家の謎めいた作風の魅力が遺憾なく発揮されていると言われる。
そもそも誰がどういう目的のために注文したものかは不明だ。
しかし、縦37センチ、横24.2センチという小品であることからも、恐らくは当時のコレクターがプライベートな空間で愛でるために制作されたのではないかと推測される。
以来一度も一般大衆の目に触れることなく、昨年まではフランスの蒐集家の所蔵になっていた。それがこのたび、ルーブル美術館の所蔵品として展示されることになったのである。
ルーブル美術館初の一般からの寄付金
ところで、絵画史上重要とされる作品が既にひしめいているルーブルで、この絵がニュースターとして迎えられたのには、絵画本来の価値以外の、つまりプラスアルファの要因がある。
それと言うのが、この作品の購入に当たって、初めて一般からの寄付を募り、これが予想外の大成功を収めたという前代未聞の試み。
「Tous Mécènes!(トゥース・メセーヌ=みんながメセナ)」と名づけられたこのキャンペーンを展開した、ルーブル美術館発展・メセナ部門のディレクターであるクリストフ・モナン氏にその経緯をうかがった。
「財源不足から始まったことなんですよ」と、まず彼は言う。