今週日本では京都大学などの入試問題が試験中にネット投稿された事件が大騒ぎになっている。しかし、中国だったらこんな手の込んだ策を弄する必要はないかもしれない。カネさえ払えば大学の卒業証明書など簡単に入手できるからだ。

 もちろんすべて贋物なのだが、値段は有名大学の卒業証明書ほど高くなるらしい。さらにもっとカネを積めば、本物の用紙に本物の押印のある「立派な」偽造証明書まで手に入るという。さすがは中国だ、何とも恐れ入るではないか。

 これらは2000年秋から北京に在勤していた頃、筆者が北京市内で聞き及んだ噂話である。実際に試してみたわけではないので、真偽のほどは分からない。しかし、恐らくは、現在でもこうした状況に大きな変化はないだろう。

学歴社会中国

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北京大学の校門〔AFPBB News

 中国はある意味で日本以上の学歴社会だ。大学は一種のブランドであり、その優劣が人生を決めるとすら言われていた。

 2000年当時、有名大学の入試失敗を苦に自殺した受験生や希望大学に入れず絶望する学生の話をよく聞いたものだ。

 その中国の大学で過去数年間ちょっとした異変が起きている。あれほど苦労して(場合によっては多額の借金をしてまで)大学を卒業しても、思うように就職できなくなっているのだ。教育に対する先行投資がペイしなくなったということなのか。

 その関連で、ちょっと古いが面白い記事を見つけた。2010年11月22日付「新京報」 によれば、中国の大卒者初任給と出稼ぎ労働者賃金のギャップが徐々に縮まり、2008年にその差は平均で300元(約3800円)にまで縮まったのだそうだ。

中国における大卒の価値

 冒頭の新京報は中国社会科学院人口・労働経済研究所の蔡昉所長の発言として概要次の通り伝えている。

●中国の人口ボーナス(生産年齢人口が多く高度経済成長が可能な状態)は既に過去のものとなり、労働力不足が生じている。

●2003年から2008年まで、大卒初任給が月約1500元であったのに対し、農民工(出稼ぎ労働者)の賃金は月額約700元から約1200元に跳ね上がった。

●2003年以降両者の差は縮小趨勢にあるが、こうした状況は中国が初めて直面するものであり、今後も長期間続くかどうかは何とも言えない。

●1年でも早く中途退学すれば、それだけ金を稼げるような今の状況は、「なぜ大学へ行くのか」「なぜ勉強するのか」といった負の効果を生むことを恐れる。