ナーブのVR内見(ナーブ提供)

 AR(拡張現実)、VR(仮想現実)は、今もっとも注目されるテクノロジーだ。調査会社IDCが昨年発表したその市場規模は13兆円(2022年の予測)とも言われ、多業種にわたってその波が押し寄せている。
 今回は、不動産業界におけるその「波」のひとつをご紹介したい。

不動産テックの牽引役「VR内見」

 皆さんは「VR内見」をご存じだろうか? その言葉のとおり、VRで借りたい家や事務所を内見できる、というサービスで、「VR元年」と呼ばれた2016年に登場した。

 わずか3年前のことだが、以降急速に普及し、採用店舗数も加速的に増えている。いったいなぜなのか、そして具体的になどのようなメリットがあるのか。

 業界最大手のNURVE(ナーブ)代表取締役・多田英起さんは、現在の市場について言う。

「2016年以降、各社から様々なVRを使った内覧システムが開発されました。現在も多くの不動産会社で活用されており、当社での登録物件数は150万戸にまでなっています。導入店舗数も3000店を超えました」

 これまで部屋の内見は、現場に行くのが常であった。移動し、物件を見て、また移動の繰り返す・・・すると、一日に内見できる物件に限りがある。「もっと見たかった・・・」という経験をした読者も多いだろう。

 しかし、このVRサービスを導入すると、移動の時間がかからない。その分、ユーザー側にしてみれば、選択肢が広まる。多田さんは言う。

「これまで賃貸の場合、一人が内覧する平均件数は3件でした。それがVRなら5~10件を数分で内見することも可能です」

 またユーザーだけでなく、不動産業界側にとっても業務の大幅な効率化、人件費の削減につながるというメリットがある。

「『VR内見』の撮影は専用のアプリを使って3分程度。これまで写真を何枚も撮っていたオーナー(大家)さんや仲介業者さんから見ても、圧倒的に楽です」

 借りる側も貸す側も便利になるサービス。それが「VR内見」であれば、普及をしていくのも頷けるのだが・・・では、そのクオリティはどんなものだろうか。多田さんは「現地に行かなくても、行くのと同等の体験ができます」と言い切る。