“CLICHÉS JAPONAIS”(クリシェ・ジャポネ)と題した非常に興味深い展覧会が行われている。邦訳すると、「日本のネガ(写真)」。
銀行家として大成功したアルベール・カーン
ほぼ1世紀前の日本の姿をとらえた写真と映像の展覧会で、パリ郊外、ブーローニュ・ビアンクール市にある「アルベール・カーン博物館」がその舞台だ。
展示品の由緒については、まず、この博物館の名前にもなっているアルベール・カーンという人物から説明する必要があるだろう。
生没年は、1860~1940年。銀行家として大成功を遂げた人物であるが、その出自はむしろつつましく、アルザス地方の片田舎、家畜商人を父とするユダヤ人家庭に生まれた。
10歳の時に母を亡くし、さらに普仏戦争に遭遇し、居住地がプロシア(ドイツ)領となったことから、一家はフランス国籍を取るか、住み慣れた土地を取るかという難しい選択を迫られた。
結局、フランス国内の別の場所に移住。さらに16歳になったアルベールは、自活の道を求めて単身パリに上り、最初は菓子店の見習いから出発し、ほどなく地方銀行に職を得る。
南アフリカの金鉱やダイヤモンドにいち早く目をつける
しかも、そこで働きつつ、2つの大学入学資格を取ったということから既に、並外れた才能と努力の人を想像できるが、銀行の投資分野でも才覚を発揮。
南アフリカの金鉱やダイヤモンド鉱にいち早く目をつけ、それに携わる企業の株を買い、投資を続けることによって、莫大な利益を生んだ。
そして、銀行の共同経営者になり、さらには自分自身の銀行を設立するというように、世情の上昇気流をとらえて、立身出世の階段を上りつめた。
1800年代も終盤のことである。