中国の学生は、どれほど大きな夢を抱いているのか?

 政治面でも経済面でも存在感を増している中国。だが、その発展を支える個人の生活に目が向けられることは少ない。本連載では、2001年に中国で起業し、長年にわたって現地のコミュニティに溶け込んできた宮田将士氏が、「等身大の中国人」の心の内を描いていく。(JBpress)

【第1回】「息子が働かない中国人夫婦のささやかな優越感」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55260

「成功」に憧れる大学生

 陸さんは、上海のある理系の大学に通う20歳の若者である。

 地方都市出身の陸さんは、子供のから学校の成績がとても良かった。当然ながら、親や親族一同からの大きな期待を一身に浴び、小学生の頃から死に物狂いで勉強した結果、見事上海の大学に入学することができた。

 これまで、大学に入学することが大きな目標だった陸さんにとって、大学で何をするかというのは、実はそれほど真剣に考えていたわけではない。数学と物理が得意だったことと、漠然と「理系の大学を出ていれば就職にも困らないだろう」という理由で選んだのが今の学部だった。

 もちろん、大学の授業をおろそかにしているわけではない。真面目な性格の陸さんは、授業をサボるようなこともなかったし、毎日それなりに忙しく、まあ充実した毎日を送ってはいた。

 ただ、・・・である。

 それなりというのはやはり「それなり」で、ものすごく充実しているかと言えば、そうではなかったのも事実だ。周りの友人は、毎日とても楽しそうにキャンパスライフを謳歌しているが、陸さんはなんだか物足りなかった。

 こんな憂鬱な気持ちになる理由を、陸さんは自分でも知っている。それは、最近ネットでよく見る若者の起業に関するニュースが原因だ。