2月6日 日本経済新聞電子版に「医療・介護の生産性低く 全産業の6割止まり」と題された記事が掲載されました。

 記事では「菅政権が成長の要として期待している医療・介護サービスの生産性の水準は全産業平均の6割にとどまり、様々な業種の中でも低い部類」という事実を提示しています。

 その上で医療・介護の問題点として、以下の2点を挙げています。

(1)参入障壁があり事業者間の競争が乏しく、生産性を高めようという動機づけが働きにくい。
(2)福祉サービスの料金は公定価格が基本で、サービスの差が生まれにくい。

 解決策として、(1)に対しては「競争原理の導入による生産性向上」、(2)に対しては「自由価格の導入」を提唱していました。

 この記事を読んだ読者のほとんどが、「生産性が低いのであれば、医療費の公的負担を増やす前に市場経済の原理を取り入れて(つまり規制緩和して)、生産性を高めるべき」と考えてしまうことでしょう。

 確かに、日本の医療と介護は国民皆保険制度のもと、様々な規制があり、価格も公的に全国一律に決められています。

 でも、様々な規制と全国一律の公定価格は、「広く、安く、平等に、一定水準の医療を供給するため」に存在しているのです。効率性を追求して、医療における規制緩和と価格自由化を進めることは、医療そのものをダメにしてしまう危険性があります。

売り上げが低いのは医療費が安く設定されているから

 日経の記事によれば、「企業で働く人1人が生み出す平均的な付加価値額(粗利益)は564万円」。それに対して「医療・介護で働く人は342万円」と生産性が低く、全産業平均の6割しかない事実を指摘しています。確かに付加価値額は全産業中でワーストレベルですし、労働者派遣業よりも低い状況です。