2月19日、胡錦濤総書記は共産党中央党校で「インターネットをはじめとする社会管理体系の強化」を緊急指示したという。3日後の22日には周永康政治局常務委員も、今後は「より一層厳しいインターネット検閲」が必要だと述べたそうだ。

 ネット上で呼びかけられた2月20日のデモは「不発」に終わったようだが、27日には20日より5カ所多い18都市でデモが呼びかけられている。動員される警察官や武警兵士たちは、せっかくの日曜日だというのに、ご苦労なことだ。

社会管理はネット管理だけではない

中国国営メディア、抗議デモ呼びかけを批判

北京で21日、抗議でも参加者を監視する警察官〔AFPBB News

 最近の報道でちょっと違和感を感じるのは、どの記事も中国の「ネット管理」強化ばかりを取り上げていることだ。

 しかし、今回胡錦濤総書記が強化を指示した「社会管理体系」は、インターネットや携帯電話の監視だけではない。

 この点につき、公安を担当する周永康常務委員は2月21日、党の地方指導者や各行政官庁部長(閣僚)級党員に対し次の通り述べたという。

●社会管理とは、党と国家が抗議行動などの事件発生を防止するために民衆を管理することであり、党・政府高官にとって最大の責務でなければならない

●特に、民衆の移動を制限するため戸籍制度を改善すること、民衆に関する国家レベルのデータベースを整備すること、「健全な」インターネット環境のため党、国家、各産業部門などでの自主規制を活用することが必要である

 要するに、党・国家などあらゆるレベルで民衆の管理を強化する必要があると言っている。特に、あの悪名高い中国の戸籍制度をさらに「改善」すべしというのだから、中国政府の危機感の高さは我々の想像を超えているようだ。

 それでも、中東の「ジャスミン革命」が直ちに中国に波及する可能性は低いという筆者の見立ては今も変わらない。中国の現状に鑑みれば、誰が責任者かも分からないネット上の「呼びかけ」だけで数十万の民衆が動き出す可能性は低いだろう。

 実際に、2月2日、中国の各大学には大学生・教員の外出を禁止する通達が出されていたらしい。これも立派な「社会管理」の強化である。メディアではインターネットの規制ばかり注目されるが、中国公安の能力を過小評価すべきではない。