そのバンゴール基地を本拠地としている戦略原潜(オハイオ級原子力潜水艦)が、中国やロシアによる米国とその同盟国に対する核攻撃を抑止するために核弾道ミサイルを搭載して(それぞれのオハイオ級戦略原潜には24基のトライデント弾道ミサイルが搭載される)太平洋に出動する際には、バンゴール基地からピュージェットサウンドを北上し、ファンデフカ海峡を西航して太平洋に出ることになる。

 すなわち、バンゴール基地から出動する米海軍戦略原潜は、中国製高性能水中センサーが設置されているエンデバー地区を通過しなければ大平洋での作戦行動はできないのだ。

 カナダの大学が運用しているという名目にはなっているものの、米海軍戦略原潜が避けて通れない海域の海底に高性能水中センサーを設置しているのは、中国海軍が本拠地としている三亜市の中国企業である。米海軍関係者たち、とりわけ「神以外は全てを疑い監視せよ」をモットーとするアメリカ海軍情報局関係者たちが、疑いの目を向けないわけにはいかないのは当然と言えよう。

疑いを捨てきれない米海軍関係者たち

 ONCの研究者やカナダやアメリカの海洋科学者たちによると、ONCネプチューンのエンデバー海域に設置された中国製水中音響測定装置によって、潜水艦の行動を分析することは極めて困難であるという。しかしながら、たとえONCには純科学的なデータしかもたらせなくとも、センサーを開発し所有している三亜深海研究所は別のデータを入手できる仕組みになっている可能性も否定できない、と米海軍関係者たちは考えている。その場合、三亜深海研究所が得たデータは中国海軍が手にすることになるのは当然だ。

 もちろん、そのデータがONCネプチューンで潜水艦の行動を監視するために有用かどうかは明らかではない。ただし、この種のセンサーによって得られる水中環境データは非軍事的(純科学的)にも軍事的にもともに極めて貴重であることは間違いない。

 そのため、米海軍としては、トランプ政権に働きかけて、カナダ政府に中国製水中音響測定装置の撤去を要請する可能性もある。ファーウェイ副会長逮捕でもめているカナダ・中国・アメリカの三国間に、新たな難題が加わるかもしれない。