また、アメリカ海軍の退役艦を直接移転するという方式も、米中関係を気にするアメリカ国内勢力の存在などで、調達が難航する恐れがあった。そのため、台湾国内でのライセンス生産という手段によって、確実に近代的フリゲートを手にすることになった。このように、アメリカ側も中国に対して若干遠慮していたのが、台湾海軍フリゲートの調達であった。
だが、今回の9番艦と10番艦の調達は、台湾でのライセンス生産ではなくアメリカからの退役艦の直接輸入という方式がとられた(ちなみにFFG-1112「銘傳」はアメリカ海軍フリゲート「テイラー」であり、FFC-1115「逢甲」はアメリカ海軍フリゲート「ゲイリー」であった)。
すなわち、アメリカ側は中国に遠慮することなく中古軍艦を台湾に直接供与し始めた。台湾側も、より迅速に対中防衛態勢を強化するために、中国からのより強い反感を受けることを前提にアメリカからの直接調達に踏み切ったのである。
南沙諸島「太平島」における砲撃訓練
台湾海軍のフリゲート調達に引き続いて、台湾沿岸警備隊も中国に対する軍事的対抗姿勢を明示する動きを示そうとしている。すなわち、南沙諸島「太平島」における砲撃訓練の実施である。
太平島というのは、南沙諸島で唯一台湾が実効支配を続けている島嶼である。台湾は、中国、フィリピン、ベトナム同様に南沙諸島全体の領有権を主張している。しかしながら、台湾が実効支配を続けてきているのは太平島だけである。
台湾当局は、2007年以来、太平島に軍用輸送機の発着が可能な滑走路を設置しており、警備隊を常駐させている。それとともに、沿岸警備隊の巡視船や補給のための民間輸送船、それに軍用輸送機などが定期的に台湾と太平島を結んでいる。